東北大学編入 tyakanobuの編入体験記

東北大学工学部編入学試験体験記

平成29年度東北大学工学部編入学試験数学解答

お久しぶりです!ちゃかのぶです!

 

前回のブログを見たら,投稿日が4月25日となっていました...1カ月以上空いてしまい申し訳ないです...

 

言い訳になってしまいますが,毎週1本の実験レポートを仕上げるのに土日を費やしているので(僕の効率が悪いんですが...笑)ブログを書けませんでした.

 

今日(2021年6月5日)は実験レポートが無い日なので時間ができました笑

 

そんなわけで,今回は平成29年の数学になります.

 

 

問題Ⅰ

問1,問2

計算問題になります.面白いのは問2で,行列Aの逆行列が元の行列Aに一致します.

 

ある行列にその行列の逆行列をかけると単位行列Eになりますから,この事実はA^2=Eであることを意味します

 

これは問3を解くカギになります!

 

問3

行列BをB=A^n + nA^{n-1} - A^{n-2}で定義するとき,Bをnとxで表せとのことです.

 

A^nをごり押しで計算してもいけるのかもしれませんが,Aの成分がxで表されているので中々大変そうですよね.

 

この手の問題は何らかの規則性を受験生に見つけさせるのが出題者の意図(僕の主観です)なので,とりあえずnに色々な数値を代入してみると良いです.

 

実際にn=3,4,...を代入してみるとB=nA^{n-1}という一般形でBを表現できることが分かると思います.

 

あとはB=nA^{n-1}数学的帰納法で証明します.この場合の数学的帰納法はそんなに難しくないです.

 

B=nA^{n-1}という一般形が正しいことが分かったわけですが,A^nの形が分からないのでこのままでは解答になりません.

 

そこで問2の結果を使います.東北大の数学は前の問で得られた結論を最後の問で応用するという形式が多いような気がします

 

例えばn=3の時は,A^3 = AA^2 = AE = Aと変形できます.n=4の時は,A^4 = A^2A^2 = EE = Eと変形できます.つまりnが奇数の時はB=A,nが偶数の時は[B=E]と表現できます

 

したがって,nを奇数と偶数で場合分けしてBの形を書けば解が得られます.

 

問題Ⅱ

問1

空間図形の問題です.図が全くないのでとっつきにくいですよね...

 

問1は平面y=-1と曲面Sの交線の方程式を求めよとのことです.

 

平面と曲面の交線というのは,平面の方程式と曲面の方程式を同時に満たす点の集合です. 

 

したがって,平面の方程式と曲面の方程式の連立方程式の解が交線の方程式になります.この場合はy=-1を曲面Sの方程式に代入するだけです.

 

z=の形に直すと放物線の式が現れるので,図示は簡単です.解答の図は曲面Sを平面y=-1で切ったときの断面図というわけです.

 

問2

問2についても平面Pの式を曲面Sの式に代入するだけでOKです.

 

問3

最初にこの問題に当たった時はかなり悩みました...発想が難しかったです.

 

上述しましたが,東北大の数学は前の問で得られた結論を後の問題で応用することが多いです.この問でも問2の考え方を応用します.

 

問2ではa=1として交線を求めました.その交線は円でした.このことから,曲面Sと平面Pが交わると交線は円になることが分かりました.

 

それでは曲面Sと平面Pが接している時,円の半径はどうなるでしょうか?

 

実際に図に起こしてみると,円の半径は0になることが想像できます.半径0の円というか,点ですね笑

 

そんなわけで,aに具体的な数値は代入せずに平面Pの式を曲面Sの式に代入してみます.うまく円の式っぽく変形すると,円の半径がaの式で表せることが分かります.

 

円の半径の式=0としてaを求めることができます.接点のx座標,y座標は円の中心の座標と考えられるので,解答のような一般形で表せます.

 

問4

二重積分で求めるのがおすすめです.領域Dをどのように定義するかと,どのように変数変換するかがコツです.

 

円や楕円の領域で二重積分するときは極座標を使って変数変換するのがオーソドックスなやり方で一番簡単です.

 

この問の場合,極座標に変数変換するときにx = rcos \theta, y = rsin \theta + 1と置くと良いです.

 

このように変数変換すると変換後の領域が簡単に表せます.

 

問題Ⅲ

問1

三項間漸化式です.以前紹介した受験の月や「編入数学入門」に解法が載っているのでぜひ見てみてください!

 

問2

この問の数学的帰納法はかなり独特です...僕は先輩から教えてもらったのですが,いまだに違和感を覚えます笑

 

普通,数学的帰納法はn=1の時成り立つ,n=kの時成り立つと仮定してn=k+1の時成り立つ...という論法で証明するのですが,この問についてはn=1,2の時成り立つ,n=k, k+1の時成り立つと仮定してn=k+2の時成り立つ...という感じなんですよね...

 

正直,あまり自信がないです笑

 

問3

こちらも数列に関する問題です.

 

(b)では数学的帰納法を使って-1 \lt c_n \lt 0であることを示します.n=1の時は(a)で計算済みなので,n=kの時に成り立つと仮定して-1 \lt c_k \lt 0をうまく変形していきます.

 

問題でc_{n+1}の具体的な形が示されているので,この形をうまく作り出すのがコツです.

 

不等式の変形の仕方に気を付けてください!

 

(c)ですが,単調減少列であることを示すにはc_{n+1} \lt c_{n}を示せば良いです.

 

数列の極限を求めるときは,c_{n+1}c_{n}のn→∞のときの極限値が一致すると考えて定数αとおきαについて解きます.

 

似たような問題が「編入数学徹底研究」や「大学編入のための数学問題集」に載っていたと思います.

 

まとめ

平成29年の数学は全体的に難しかったと思います.

 

しかし,東北大の数学は前の問で得られた結論を後の問で応用するという形式が多いので,行き詰まったら前の問に戻ってもう一度考えてみるのがおすすめです!

 

最後まで見ていただきありがとうございました!

平成30年度東北大学工学部化学・バイオ工学科編入学試験解答

こんにちは!ちゃかのぶです.

 

今回は平成30年度の専門化学の解説をしたいと思います.

 

前回はこちら↓
tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1

暗記項目になってしまいます...

 

臭化銀は塩化ナトリウム型構造をとります.

 

暗記とは言いましたが,半径比則という考え方があります.すべての結晶に当てはめられるわけではありませんが,面白いと思うのでぜひ調べてみてください.

 

問2

化学熱力学で最も重要な式の一つである\Delta G^\circ = -RTln{K}を使います.

 

溶解平衡定数Kspが与えられているのでこれを使います.

 

問3

標準水和エネルギー,高専では習わなかったので調べてはみたのですが有用な情報は得られませんでした...

 

AgBrの標準水和ギブズエネルギーを求めろとのことですが,与えられたAg+とBr-の標準水和ギブズエネルギーを足すぐらいしか思いつきませんでした.

 

和はAgClの標準水和ギブズエネルギーからそこまで大きくずれているわけではないのでおそらく,これで良いと思います...

 

何より後の問でつじつまが合うので(笑)

 

アトキンス物理化学(概論じゃない方)も見たのですが,やはり標準水和エネルギーは載っていませんでした.

 

可能性があるとすればシュライバー・アトキンス無機化学でしょうか.手元に無いので分かりませんが,今度図書館に行く機会があれば見てみようと思います!

 

問4

ここまででAgClの標準溶解ギブズエネルギー,標準水和ギブズエネルギーが分かっていますが,標準格子ギブズエネルギーだけが分かりません.

 

イオン結晶の溶解とはどういう現象だったかというと,水分子がイオン結晶の陽イオンや陰イオンを水和し,イオンを引き剥がす現象でした.

 

つまり,「溶解=水和+結晶構造の分解」です.

 

なのでボルン-ハーバーサイクルを構成と書いてありますが,結局は解答に書いたような\Delta_{sol}G^\circ = \Delta_{hyd}G^\circ + \Delta_{lat}G^\circが成り立ちます.

 

問5

AgClとAgBrのKspの差が\Delta_{hyd} G^\circ\Delta_{lat} G^\circのどちらに起因するのかとのことですが,\Delta_hyd} G^\circの方だと思います.

 

AgClの方がAgBrよりも\Delta_{hyd} G^\circが小さいからです.特に深い理由ではありません...

 

これはAgClの方が水和しやすいことを意味しているのだと思います.

 

問6

Kspの定義は難溶性塩の飽和溶液中でのカチオンとアニオンの濃度の積でした.

 

したがってKspが小さいということは,溶液中のカチオン,アニオンの濃度が低くても飽和に達してしまう(溶けにくい)ということです.

 

AgBrはKspがAgClに比べてはるかに小さいため,AgClより水に溶けにくいです.

 

問7

Ksp = [Ag^+[Cl^-]]に値を代入するだけです!

 

問8

溶解度積は温度に依存する平衡定数であることを念頭においてください.

 

飽和状態では [Ag^+],[Cl^-]の積がKspに等しくなっています.温度変化が無ければKsp=一定ですから,さらに塩化物イオンを追加するとKspを一定に保つために [Ag^+]や[Cl^-]を減らす必要があります.

 

そこでAgClを沈殿させて,Kspを一定に保とうとするわけです.共通イオン効果と呼ばれます.

 

問9

AgClは塩化物イオンがたくさんあると錯イオンを形成して溶解します.

 

陽イオンの定性分析のあたりでよく見かける話です.他にも特徴的な反応が書いてあったりするので,余裕があれば覚えておくと良いかもしれません.

 

問10

AgBrの結合は完全なイオン結合でなく,少し共有結合が混ざっています.

 

上述しましたが,溶解現象はイオンの水和から始まるので水分子が水和しやすい,イオン性の強い物質ほど溶けやすいと言えます.

 

問題Ⅱ

問1

Cahn–Ingold–Prelog則という方法に従って命名します.

 

詳しくは有機化学の専門書や,ネットで検索してみてください!

 

Cahn–Ingold–Prelog則のうち”多重結合原子は同じ数の単結合の原子と等価である”が一番分かりにくいと思います.これは例えば,C=Oという結合ならO-C-O-Cというように分解できるという意味です.

 

二重結合炭素は酸素と二本の結合を作っているので,二個の酸素と結合しているのと等価である,という感じでしょうか...(分かりにくくてごめんなさい)

 

問2

与えられた分子式C4H9Fの構造異性体を書き出せとのことです.

 

水素の数を調べると,炭素数の2倍+1個なのでフッ素で一か所置換されたアルカンであることが分かります.

 

したがって炭素数4のアルカンの構造異性体を全て書き出し,フッ素を配置します.

 

不斉炭素は2-フルオロブタンの2位の炭素です.

 

問3(a)

酸の共役塩基が安定であればあるほど,その酸は酸性度が高くなります.

 

与えられた4個の化合物の中では,シクロヘキサノールのみ,共鳴構造式が書けません.したがって最も酸性が弱いです.

 

他のフェノール誘導体の中ではp-クロロフェノールが最も酸性が強いです.これは塩素が誘起的に共役塩基の酸素上の電子を引き付けて非局在化するためです.

 

p-メトキシフェノールは真逆で,メトキシ基は電子供与基なので共役塩基が不安定化され酸性が弱くなります.

 

問3(b)

カルボン酸の場合,α炭素に電子求引性の置換基が結合していると酸性が強くなります.

 

また,電子求引基の数が多いほど酸性が強くなります.トリフルオロ酢酸のpKaは0.23で,かなり強めの酸です.

 

問4

水素化リチウムアルミニウムはヒドリドイオンH^-を生じてカルボン酸やアルデヒドエステルをアルコールに還元する試薬です.

 

水素化リチウムアルミニウムをエステルを反応させるとエステル結合の右と左の構造を持つ別々のアルコールが生じます.

 

他にもヒドリド還元剤として水素化ホウ素ナトリウムも使われますが,こちらは水素化リチウムアルミニウムよりは弱く,エステルを還元することはできません.

 

問5(a)

カルボカチオン中間体を考えればOKです.第1級カルボカチオンは第2級カルボカチオンよりも不安定で生成速度が遅い...という論理です!

問5(b)

化合物Eを主生成物として得るにはC6H11-CH2CH3の赤字の炭素の部分に+が来るような中間体が生じやすくなれば良いので,用いるべきアルケンはすぐに分かります!

 

問5(c)

Wittig反応という有名な反応です.C=OをC=Cに変換する便利な反応です.このためテストにはよく出題されます.

 

問6

化合物(a)はオルトパラ配向の置換基が二個結合しているので少し迷いますが,このような時は置換基効果がより強い方の置換基から見たオルト位,またはパラ位がニトロ化されます.

 

化合物(b)の場合,ニトロ基は強い電子求引基なのでニトロ基の結合したベンゼン環では芳香族求電子置換反応は起こりません.

 

化合物(c)のベンゼン環のうち,端のベンゼン環のメタ位か,真ん中のベンゼン環のメタ位かで迷うと思います.

 

しかしカルボニル基は電子を引き付けるので真ん中のベンゼン環は端のベンゼン環に比べて電子密度が低下しています.このためモノニトロかされるのは端のベンゼン環のメタ位になります.

 

まとめ

仙台に来てからブログの更新スピードがかなり落ちていると思います...ごめんなさい!

 

受験が近づいてきて焦りが出てきている方もいると思いますが,その気持ちは自分だけが感じてるものではないです.全ての受験生が感じていることです.

 

メンタルの管理も立派な受験です.人と話をするとか,少し運動したりしてリフレッシュすると良いと思います.

 

編入に関することならなんでも聞いてください!twitterのDMでお待ちしています!

平成30年度東北大学工学部編入学試験化学解答

こんにちは!高専生ちゃかのぶです.

今回は平成30年の化学の解説をしたいと思います.

 

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1

平成30年度の問題Ⅰは化学熱力学でした.化学平衡に関する重要な式の導出になります.

 

化学熱力学を全く勉強したことのない方にとってはかなり鬼門のように見えますが,暗記が必要なのは(エ)のみです.(ギブズエネルギー変化が負である反応は自発的)

 

まず反応進行度ですが,その名の通りどのくらい反応が進行したかを表す量です.

 

イメージとしては,正反応が1回進むとか,2回進むとかそんなところです.

 

マッカーリ・サイモン物理化学には反応進行度に関する記述が少しあるみたいなので,興味のある方は図書館に行ってみてください!

 

実際に問題Ⅰの式(1)を見てみると,例えば物質Aの物質量変化dn_Aは反応進行度を用いてdn_A = -2d\xiと表されます.正反応が1回進むと物質Aが2 mol減るというイメージです.

 

式(2)はdnに式(1)を代入するだけです.

 

問題の(エ)ですが結論から言うと,一定温度,一定圧力下で反応が自発的に進行する場合,ギブズエネルギー変化は負になります

 

これは熱力学第二法則から導かれる結論で,ギブズエネルギーに関する最重要項目の一つです.

 

物理化学系の参考書(アトキンス物理化学,マッカーリ.サイモン物理化学など)に必ず載っているので,時間があれば見てみてください!

 

時間の無い方向けに,ちょっとだけ解説しようと思います.

 

熱力学第二法則には色々な表現方法がありますが,その一つが

「孤立系のエントロピーは増加する傾向にある」

です.こちらのページに詳しく書かれています.

 

孤立系とは注目している系(フラスコの中の反応溶液など)と外界(宇宙)を合わせた系であることに注意します.

 

ある反応を温度一定,圧力一定の条件下で行う状況を考えます.上記の孤立系のエントロピー変化を式に表してみると

\Delta S_{total} = \Delta S - \frac{\Delta H}{T}

となります.\Delta S_{total} は上記の孤立系のエントロピー変化,\Delta S は反応溶液のエントロピー変化,\Delta Hは反応溶液のエンタルピー変化です.

 

-\frac{\Delta H}{T}エントロピーの定義式S=\frac{Q}{T}からきています.もし発熱反応なら\Delta H \lt 0なので外界に正のエントロピー変化をもたらします.

 

この反応が自発的なら,熱力学第二法則より\Delta S_{total} \gt 0なので

\Delta S - \frac{\Delta H}{T} \gt 0

T\Delta S - \Delta H \gt 0

となります.

 

つまり,温度一定・圧力一定であれば左辺の量が常に正になるということです.

 

ここで,ギブズエネルギーG = H - TSを定義します.そうすると

\Delta G = \Delta H - (T\Delta S + S\Delta T) = \Delta H -T\Delta S(温度一定)なので

 

T\Delta S - \Delta H \gt 0より - \Delta G \gt 0

したがって\Delta G \lt 0が温度・圧力一定の下での自発反応について成立します.

 

なぜギブズエネルギーをG=H-TSで定義するのかですが,反応が進むには何らかの量が減るというイメージから来ているとかなんとかと聞いたことがあります(本当かどうかは分かりません(笑))

 

式(5)は式(3)に化学ポテンシャルの式を代入して整理するだけです.

 

問2

RTlog_e K = -\Delta_r GをK=の形に変形し,値を代入するだけでOKです.

 

問3

高校化学でも出てくるルシャトリエの原理です.

 

アンモニアの合成反応の場合,反応式の左辺と右辺で気体粒子数が変化していることに注目します.

 

問題Ⅱ

ナトリウム化合物の話になります.問題Ⅱは解説するべき箇所が無いため省略させていただきますm(__)m.

 

問題Ⅲ

問1(a)

二重結合が末端にあるもの,二重結合が内部にあるものに大別されます.

 

二重結合が内部にあるものですが,僕はシス,トランスに引っ張られ過ぎて赤で描いた構造をすっかり忘れてしまいました(笑)

 

問1(b)

シストランス異性体の融点の特徴についてです.

 

一般に,直線性の高い構造を持つ化合物の方が融点,沸点は高いです.

 

 

トランス体はシス体に比べて分子間で重なりにくい(炭素や水素に比べてかなり大きい塩素が邪魔をする)ため,シス体よりもトランス体の方が融点が低くなります.

 

問2

L-乳酸の立体構造を書けとのことですが,L-乳酸=(S)-2-ヒドロキシプロパン酸であること,さらに立体構造の例が示されていることから化学系の方なら楽勝だと思います.

 

ですが非化学系の方の中には分からない方もいるかと思います.

 

まず立体配置(R体,S体)の決め方ですが,ここで説明するよりも図付きのwebページや本を見た方が分かりやすいと思うので,”立体配置 決め方”でググってみてください.

 

また,マクマリー有機化学など有機化学の専門書にも必ず載っているので図書館で探してみてください!

 

R,S表記とD,L表記はどちらも立体配置を表すための記号です.決め方はどちらも同じなので,R体であればD体,S体であればL体でもあります(一部例外はあるようです.wikipedia参照

 

D,L表記は特にアミノ酸に用いられます.これには歴史的背景があるようで,調べてみると面白いですよ!

 

問3

有機合成に関する問題です.

 

A:

リーデル・クラフツ反応と言います.芳香族求電子置換反応の一種です.

 

塩化アルミニウムは強いルイス酸(酸化剤)なので,クロロアルカンから塩素を引き抜いてカルボカチオンを生じます.

 

クロロメタンと塩化アルミニウムが反応するとCH_3^+が生じます.

 

これは強い求電子性を持っているので,電子をたくさん持っているベンゼンと反応する,というわけです.

 

B:

水素が結合したベンジル位の過マンガン酸酸化です.

 

反応機構は見たことがあるのですが,覚えてもあまり意味ないと思いますし,よく分かりませんでした(笑)

 

一つ注意なのですが,ベンジル位に水素が結合していないと過マンガン酸酸化は進みません

 

C:

アルコールとアルデヒド,カルボン酸の間の関係は絶対におさえておくべきです.

 

アルコールを酸化するとアルデヒドに,さらに酸化するとカルボン酸になります

 

マンガン酸はかなり強い酸化剤なので,トルエンを一気に安息香酸まで酸化します.

 

もちろん,ベンズアルデヒドを過マンガン酸で酸化しても安息香酸が得られます.

 

実はアルコールをアルデヒドまでの酸化で止める方法もあります.PCC(クロロクロム酸ピリジニウム)やペルヨージナンを用います.

 

まとめ

平成30年の化学を解説してみました.平成30年の化学は問題Ⅰ以外はそんなに難しくないかなと思います.

 

このテストに限らず,まずはテスト全体を見通して,自分のできそうなところから解いていくと時間を有効に使えますし,高得点につながると思います!

最後まで見ていただきありがとうございました!

平成30年度東北大学工学部編入学試験物理解答

お久しぶりです!ちゃかのぶです.

 

引っ越し作業がようやく終了しました.ブログの更新を再開しようと思います

前回の記事はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1(a)

運動方程式を立てて積分するだけになります!

 

問1(b)

衝突する速さがhに依らなくなるということは,球の加速度が0であるということです.

 

これは球の落下速度が一般にv=\frac{dx}{dt}と表される(速度が球の変位に依存するので加速度も球の変位に依存する)ためです.

 

どのような高さから落としてもやがて\frac{dx}{dt}=一定になり,加速度\frac{d^2x}{dt^2}=0になります.

 

したがって立式した運動方程式の左辺を0とおきvについて解けばv_Cが得られます.

 

問1(c)

(b)で立式した運動方程式の一般解を求めろという問題です.

 

解答では数学の授業でやった方法で機械的に解いています.もちろん,解の形を予想して解いても良いです.

 

最終的に得られた解にt=\infを代入するとv_Cに一致することを確認しましょう!

 

問2(a)

図2の状態でのベルトの長ささえ分かればOKです.単純な直角三角形なのですぐに分かります.

 

問2(b)

2本のベルトから,等しい大きさの弾性力を受けます.2本のベルトから弾性力を受けるので2倍するのを忘れないでください.

 

問2(c)

エネルギーの保存を考えます.球がベルトから離れるのはベルトが自然長に戻った時なので,ベルトから手を離した時とベルトが自然長に戻った時をエネルギー保存則でつなぎます.

 

やはり,ベルトは2本あるので弾性エネルギーを2倍するのを忘れないでください!

問題Ⅱ

問1

図1のコンデンサーは三種類のコンデンサC_1,C_2,C_3に分けることができます.

 

解答のようにC_1C_2,C_3は並列に,C_2C_3は直列に接続されています.

 

また,C_2は極板の間にぎっしりと誘電体が詰まっています

 

このように分解できれば後はいつものように合成容量を求めることができます.

 

等価な回路さえ書ければOKです!

 

あと,比誘電率は記載がありますが誘電率自体は記載が無いので,解答は静電容量C_0を使って表しましょう.

 

問2

極板間に金属の板を差し込むことは,極板間距離を狭めることと等価です.

 

これはコンデンサーの極板と,金属板Yの下底面の電位が等しいため(等しくないと電流が流れることになる)です.

 

Yの厚みはdなので,コンデンサーの極板間距離を丁度半分にすることになります.

 

あとは,問1でやったようにコンデンサーを分解して合成容量を求めます.

 

問3(a)

問1,問2でやったように,コンデンサーを分解します.

 

この場合は二つのコンデンサーが直列につながっているだけなので簡単です!

問3(b)

X_2を差し込む前後での静電エネルギーの変化を調べると,X_2を差し込んだ後の方が静電エネルギーが大きいので,コンデンサーには外部からエネルギーが注入されたことになります.

 

こちらのサイトに詳しく書かれていますが,誘電体をコンデンサーに差し込もうとすると誘電体はコンデンサー側に引っ張られます

 

このため誘電体を”ゆっくりと”差し込むには,進行方向と逆の力を加える必要があります.

 

2021/3/27問3(b)の解答を修正しました.

外力がした仕事をW_F,電池がした仕事をW_Eとするとエネルギー保存から

             W_F+W_E = \Delta U

が成り立ちます.

 

電池がした仕事は,極板間を移動した電荷の電気量×電圧に等しいので直接計算可能です.

 

外力がした仕事はエネルギー保存の式から計算します.計算してみると負の値になります.これは外力を進行方向と逆向きに加える必要があることと一致します.

問4

スイッチを開いているので極板の間での電荷の移動はありません

 

ですが誘電体を除いたために極板間電圧が変化してしまいます.

 

そこで,誘電体を除いた後の電圧をV'として「蓄えられている電荷=静電容量×V'」という式を立てます.

 

求めたV'を使って,静電エネルギーを求めることが可能です.

 

問題Ⅲ

問1

屈折の法則を用いる問題です.これだけなのであまりおもしろみが無いですね...

 

問2

屈折率n_1の媒質から屈折率n_2の媒質に光が入射する場合,n_1 \gt n_2であれば全反射が起こりえます.

 

全反射が起こるギリギリの入射角である臨界角を求めるには,屈折角に90^\circを代入すれば良いです.

 

この場合,実際に計算してみると臨界角は26^\circになります.問で与えられている角度は30^\circなので全反射します.

 

したがって,Eで観測される光は入射光と同じ白色光になります.

 

問3(a)

点Gを通る光と点Cを通る光の光路差二つの光の位相差を求める必要があります.

 

光路差はよく教科書に掲載されている方法で求めました.

 

与えられている波長\lambdaはおそらく媒質1内での波長を意味しているので,媒質1や媒質2内での波長を新たに求める必要はありません.

 

僕は新たに波長を求めてしまって(b)でつまってしまいました(笑)

 

次に位相差についてですが,次のことが分かれば間違えません.

  • より屈折率の大きい媒質にぶつかって反射→固定端反射(位相が[tex\pi]ずれる)
  • より屈折率の小さい媒質にぶつかって反射→自由端反射(位相はずれない)

これに基づけば,点Cと点Dではともに固定端反射するので二つの光に位相差は生じません

 

結局,求める条件は2nd\cos\theta_1=m/lambdaになります.

 

問3(b)

問3(a)で求めた条件に値を代入してみると,d=m × 2 × 10^{-7}が得られます.

 

dには範囲指定があるので,それに従ってmを調節してあげると,丁度m=3の時だけ範囲内に収まります.

 

問3(c)

点Cを通る光は点Cで固定端反射(位相が\piずれる)しています.一方,点Dを通る光は反射せずに透過してくるので位相はずれません.

 

したがってHでは二つの光は弱めあい,暗く見えます.

 

まとめ

引っ越し作業が終わり,やっとブログ更新を再開することができました!

 

これからも頑張って過去問のアップロード,ブログ更新をしていきたいと思います.

 

最後まで見ていただきありがとうございました!

平成30年度東北大学工学部編入学試験数学解答

こんにちは!ちゃかのぶです!

 

今回から平成30年度の東北大学工学部編入学試験の解説をしていきます.

 

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

大問Ⅰ

問1

\cos(\alpha + \beta)を出現させるため,オイラーの公式\theta\alpha + \betaを代入してみます.

 

e^{i(\alpha + \beta)}は次の二通りに計算できます.

この二通りで計算した式はどちらも等しいのでイコールで結んで比較すると加法定理が得られます.

 

問2(a)

\cos^2{x}-\sin^2{x}は二倍角の公式を使うことでcos{2x}に変形できます.

 

f(x)=0を解きたい場合,できるだけ関数の積になるように変形してあげるとスムーズにいくことが多いです.

 

解答に書いたように,まずは2x=\frac{\pi}{2}などのようにcosが0になる角度をイコールでつないでからxを求めた方が間違いがありません.

 

この計算を丁寧にやってみます.まず2x=\thetaとおきます.そうすると0 \leq x \leq \piより0 \leq 2x \leq 2\piなので,\thetaの定義域は0 \leq \theta \leq 2\piになります.

 

\cos{2x}=\cos{\theta}=0の解は\theta = \frac{\pi}{2}, \frac{3\pi}{2}ですから,\theta = 2xよりxは x = \frac{\pi}{4}, \frac{3\pi}{4}になります.

 

慣れてきたら置換なしで計算してみてください!

問2(b)

f'(x)を計算していくと,\cos{2x}-\sin{2x}という形が出てくると思います.

 

三角関数の和,差はそのままではf'(x)=0が計算しにくいので,三角関数の積和の公式,または合成公式を用います.cosとsinの和,差の場合は合成公式を使います

 

sinで合成しても,cosで合成してもokです.

 

また,この場合はf''(x)も計算できるので計算しておきましょう.

 

極値をとる点のxをf''(x)に代入してみて0でなければf'(x)の符号だけ考えればokです.

 

f''(x)=0になる場合は鞍点の可能性があるので注意する必要があります...

 

 問2(c)

f(x)=kを満たす点のx座標が実数解になります

 

f(x)=kを満たす点とはつまりy=f(x)y=kの交点のことですから,増減表をもとに図を書いてみて,y=kの直線を上下に動かしてみて交点を数えてみましょう.

 

実数解なしの場合を含めるのを忘れないでください!

 

問題Ⅱ

問1

点Pの座標はx,y,zにの値を代入するだけです.

 

接線ベクトルはベクトル解析の分野になりますが,x(t),y(t),z(t)を成分とするベクトル\mathbf{x}をtで微分したものが接戦ベクトルになります.ベクトルの微分は簡単で,各成分をtで微分するだけになります.

 

問2

直線の方程式を作るには,通る点の座標と方向ベクトルが必要です.

 

任意の点Pの座標は媒介変数tの式で与えられているのでそのまま使います.

 

また,問1で使った接線ベクトルがそのまま接線の方向ベクトルになるので,\frac{d\mathbf{x}}{dt}が方向ベクトルになります.

 

問3

突然ですが,平面上を円運動している質点を真横から見ると単振動しているように見えるのを思い出してください.以下の説明を理解しやすくなると思います.

 

平面はある方向から見れば直線に見えるので,曲線Cもある方向から見れば直線に見えることを示せば平面上にあることを示せると考えました

 

直線は傾きが定数である図形ですから,曲線Cの式から考察するとy(t)とz(t)に目がいきます.

 

そこで\frac{dz(t)}{dy(t)}を計算してみると,-a=定数になります.

 

これはyz平面内で(=x軸に沿った方向から見ると)曲線Cは傾き-aの直線に見えることを意味しています

 

以下にwxmaximaで描いた曲線Cの図を示します.

f:id:tyakanobu:20210311215541j:plain

図1 曲線C(a=1)

f:id:tyakanobu:20210311215545j:plain

図2 曲線C(a=1)をx軸方向から見たとき

図2の左下の中点入りの円は画面奥から手前にx軸が伸びていることを意味します.

 

例としてa=1としました.このため図2のようにx軸に沿って曲線Cを見ると傾き-1の直線になっていることが分かります.

 

wxmaximaに次のコマンドを入力しShift+Enterを押すと図1のような図が書けます.

plot3d([s*cos(t),s*sin(t),-1*s*sin(t)],[s,1,1.000000000000001],[t,0,2*%pi]);
 

媒介変数で表された関数の立体図形を描くのにどうしても媒介変数を2種類入力しないといけなかったので,媒介変数sをそれぞれに掛けました.sの範囲は限界まで小さくしました(笑).

 

問題に戻ります.曲線Cは平面上にあることが分かったので,曲線Cの接線ベクトルと平面の単位法線ベクトルは互いに垂直です

 

そこで,内積の定義から\mathbf{n}\cdot \frac{d\mathbf{x}}{dt}=0が成立します.

 

\mathbf{n}の成分はとりあえず文字で置きます.このとき\mathbf{n}単位法線ベクトルなので,各成分の2乗の和が1に等しいとします

 

\mathbf{n}\cdot \frac{d\mathbf{x}}{dt}を計算していくと\alpha (-a \sin{t}) + (\beta - a \gamma)\cos{t}=0という式が現れます.

 

ここで両辺を比較しますが,この場合は係数=0しかあり得ません.

 

解を各成分の2乗の和が1に等しいという条件式に代入してやると,ようやく単位法線ベクトルの成分が得られます.

 

そして最後に,曲線Cが通る点問1で求めた点Pの座標,どちらでも良いです)を使って平面の方程式を作ります!

 

問4

ここでまた曲線Cの式に注目すると,公式\cos^2{x}+\sin^2{x}=1が使えそうな形があることに気づきます.

 

x(t)^2+z(t)^2=a^2(\cos^2{t}+\sin^2{t})=a^2です.

 

この式は任意のyについて成立するので,z軸を中心軸とする円筒を表します.

 

したがってxz平面上では半径aの円になります.

 

問題Ⅲ

全て計算問題のため解説は省略します.

 

まとめ

平成30年の数学は問題Ⅱの問3が一番厄介でした.解説もかなり長くなってしまいました...

 

次回は物理になります!最後まで見ていただきありがとうございました!

平成31年度東北大学工学部化学・バイオ工学科編入学試験解答

こんにちは!高専生ちゃかのぶです.

 

今回は平成31年の東北大化学・バイオ工学科編入学試験の解答を解説していきたいと思います.

 

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1

ここで与えられているサイクルというのはカルノーサイクルのことです.

 

カルノーサイクルのpV図は必ずカルノーサイクルと一緒に教わるので,図自体を覚えている方も多いと思います.即答できるかもしれません.

 

図を覚えていなくても各過程での圧力と体積の関係が分かっていれば,正しい図を選ぶことができると思います.

 

まず等温過程ですが,読んで字のごとく\Delta T = 0です.

 

次に理想気体の状態方程式の両辺の\Deltaを取ると

\Delta(PV) = nR\Delta T

となりますが,\Delta T = 0なので

\Delta(PV) = 0

になります.これはつまりPV = c(一定)ですから,PはVに反比例します.等温過程におけるPV図は反比例のグラフになります.

 

断熱過程のPV図ですが,これはポアソンの法則PV^\gamma = c(一定)から考察します.

 

断熱過程のPV図も反比例のグラフに似たグラフになりますが,勾配が等温過程よりも急です.

 

これは\gamma = \frac{C_p}{C_v} \gt 1であり,単位温度変化当たりの圧力変化がより大きいためです.

 

問2

熱的平衡状態とは,熱源と熱源の間で熱の授受が無い状態のことです.

 

熱は温度差のある熱源間でやりとりされるので,熱的平衡状態は熱源間の温度差が0のの状態を意味します.

 

熱は高温熱源⇒低温熱源の方向にしか移動しない(熱力学第二法則)ので,熱源間に温度差があって熱が移動してしまうと元の状態に戻りません.

 

したがって,準静的(可逆的)であるには,熱源間に温度差が無い状態である必要があります(実際には摩擦など不可逆過程が絶対に起こるので準静的=仮想的なもの).

 

問3

断熱過程における熱力学第一法則,関係式dU=nC_VdT,マイヤーの関係式R=C_P-C_Vを用います.

 

T_1V_2^{\gamma-1}=T_2V_3^{\gammma-1}ポアソンの法則と言います.ポアソンの法則の導出の仕方は次のようになります.

  1. 断熱過程における熱力学第一法則の式を立式
  2. 1の式とdU=nC_VdTをイコールで結ぶ
  3. 積分する
  4. マイヤーの式を使ってRを消去し整理する

ポアソンの法則は断熱過程において一定になる量を意味しています.

 

問4

過程④におけるポアソンの法則を立式し,問3で導出したポアソンの法則を使って温度を消去します.

 

問5

等温過程では仕事の定義式から,断熱過程では熱力学第一法則から仕事を算出します.

 

膨張しているのか,収縮しているのかで仕事の符号が変わるので気をつけて計算してください!

問6

内部エネルギーは温度にのみ依存します.したがって温度が変化しない等温過程では内部エネルギーは変化しません

 

また,断熱過程では文字通り熱が授受されないので受け取る熱はゼロです.

 

問7

PV図で囲まれた部分が系が外部に対してした仕事になります.

 

これは仕事が\int P dVで表されることから明らかです.

 

問8

問題文にしたがって,問5で求めた仕事を,系が受け取った熱で割ってやると有名なカルノーサイクルの熱効率を表す式が得られます.

 

問9

エントロピーの定義式[S=\frac{Q}{T}]から各過程でのエントロピー変化がどうなるかを考えます.

 

考えるといっても断熱過程では授受される熱がゼロなので,当然エントロピー変化もゼロです.

 

等温過程においては系が受け取った熱を絶対温度で割ることになりますが,結局定数になります.

 

以上のことから,温度をエントロピーに対してプロットすると解答のような長方形になります.

 

問10

試しに問9で書いた図の面積を考えてみると,丁度問5で求めた仕事の総和に等しいことが分かります.つまり,TS図の面積は仕事に等しいです.

 

問11

カルノーサイクルは熱の一部を仕事に変換するものです.摩擦などによって受け取った熱が逃げてしまったら,当然使える熱が少なくなって仕事も少なくなってしまいます.

 

問題Ⅱ

問1

環状アルカンのハロゲン置換体の異性体書き出しになります.

 

この問の場合二種類のハロゲンにより置換されているので,シス体が二種類(ジアステレオマー)あります(解答が間違っていました,修正しました).

 

一方,トランス体の方は鏡像異性体が存在します.

 

問2(a)

フェノールからサリチル酸を合成するには,工業的にはコルベ・シュミット反応を用います.

 

リーデルクラフツアルキル化でオルト位をメチル化したあと,過マンガン酸で酸化するという経路も考えられますが,おそらく収率が悪いかなと思います.

 

フェノールをナトリウムフェノキシドに変換し,高温高圧で二酸化炭素を反応させるとオルト位にカルボキシ基が導入されます.

 

酸処理すると,サリチル酸が得られます.

 

問2(b)

化合物の酸性度の強弱を議論したい場合は,共役塩基の安定度を考えます

 

サリチル酸は他の構造異性体よりも遥かに酸性度が高いのですが,それは分子内水素結合を形成できるためです.

 

ヒドロキシ基がカルボキシ基に近い方が当然水素結合を作りやすいので,共役塩基がより安定になります.

 

問3

与えられた分子式を見ると,化合物Dは飽和であることが分かります.

 

Naと反応すると水素を発生し,クロム酸酸化するとカルボン酸を生じることから化合物Dは第一級アルコールであることは明らかです.

 

この場合第一級アルコールは2種類ありますが,両方書き出して濃硫酸で脱水し,過マンガン酸酸化させてみて問題文と一致する方を選ぶのが一番早いかと思います.

 

問4

エステルやニトリルは覚える反応が多くて困るのですが,この問に出てくる有名な反応に共通するのは,強力な求核剤が反応に関与しているということです.

 

水素化リチウムアルミニウムはヒドリドイオンH^-を放出できる試薬で,強力な還元剤です.

 

グリニャール試薬はマグネシウムの結合した炭素が強く負の電荷を帯びているので,これも協力な求核剤になります.

 

問5

オルトパラ配向,メタ配向を覚えていれば即答です!

 

化合物Kはニトロ基を先に導入してしまうと,ニトロ基がメタ配向性なので塩素がオルト位に入りません.

 

一方化合物Lは臭素を先に導入してしまうと,臭素がオルトパラ配向性なのでメタ位にアルキル基が入りません.このため,先にアルキル基を導入して過マンガン酸酸化してから臭素を導入します.

 

まとめ

解説の公開がかなり遅れてしまいました...

 

かなり忙しいのですが,隙間時間を使って頑張っていきたいと思います...!

平成31年度東北大学工学部編入学試験化学解答

みなさんこんにちは ちゃかのぶです!

 

もうそろそろ3月になろうとしていますが,編入試験に向けた計画はたてていますか?

 

3月は高校受験や大学受験でいうところの8月(夏休み)に相当する月です.後悔の無い春休みになることを願っています!!

 

今回は平成31年の化学の解説をしていきます

 

前回の記事はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1 ア

化学熱力学になります.

 

エンタルピーはH=U+pVで定義されます.こればかりは覚えるしかありませんが,なぜこのように定義するのかと言えば,こう定義すると嬉しいことがあるからなんです.

 

定圧下における系のエンタルピー変化は

 

\Delta H = \Delta U + \Delta(pV) = \Delta U + p\Delta V

 

になります.また,熱力学第一法則を適用すると,\Delta U = Q + Wなので

 

\Delta H = Q + W + p\Delta V

 

になります.定圧下における仕事WはW=-\int p dV = -p\int dV = -p\Delta Vなのでこれを代入すると

 

\Delta H = Q - p\Delta V + p\Delta V = Q

 

が得られます.つまり,エンタルピー変化は定圧下において系に出入りする熱に等しいと言えます.

 

というのがよく言われる説明ですが,熱力学第一法則\Delta U = Q - p\Delta Vの変形した式\Delta U + p\Delta V = Qからも左辺が定圧化における熱に等しいことはすぐに分かります.

 

問1 イ~オ

ある化合物の生成反応を別の式から作りたいときは,まず反応式の左辺を完成させることを目標にします

 

この問の場合,求めたいのはC(s,graphite)+2H_2(g) \rightarrow CH_4(g)ですが,左辺に炭素1個,水素2個あるので,二酸化炭素の生成反応+水の生成反応×2で炭素と水素を揃えます.

 

そしたらメタンの燃焼反応の式の両辺を-1倍して今得た式に加え整理すると目的のメタンの生成反応が得られます.

 

高校化学ではC(s,graphite)+O_2(g) = CO_2(g) + 393.5 kJなどと表記します.意識しないかもしれませんが,O_2(g)CO_2(g)はその化合物の持つエネルギー(結合エネルギー)を意味しています.

 

このため,ここまでの計算のように各化合物の化学式を代数のように扱えるわけです.

 

問2,問3,問4(a)

問1イ~オに示したように,まずは反応式の左辺を完成させることを目標にします.

 

問2の解答をよく見ていただきたいのですが,炭素や水素の係数を決めると酸素,水,二酸化炭素ベンゼンの燃焼反応における係数と一致することが分かります.

 

大抵の問題では最終的に丁度良く酸素,水,二酸化炭素は打ち消されます.

 

問4(b)

"共役"がキーワードです.

 

電子は一か所に留まっているよりも広がっていた方が安定になります.このため,ベンゼンのようにp軌道が環状に連なっている構造を持つ化合物はより安定化します.(全てのp軌道の間で電子移動が可能になるため)

 

シクロヘキサン,シクロヘキセン,ベンゼンの中ではシクロヘキサンが最も安定なのでシクロヘキサンの持つエネルギーを0とすると,シクロヘキセン×3とベンゼンの持つエネルギーの大小関係は解答に書いた図のようになります.

 

不安定であるということは,それだけ大きな熱を蓄えているということですから,シクロヘキセン×3の水素化に伴って出てくる熱は,ベンゼンの水素化に伴って出てくる熱よりも大きいはずです.

 

問題Ⅱ

問1

ハロゲンは周期が大きくなるほど分子間力が強くなります.このため周期が大きくなるにつれて標準状態で気体→液体→固体で存在することになります.

 

問2

ハロゲンは周期が小さいほど酸化力が強くなります

 

酸化力とは電子を引き抜く力の大きさことです.酸化力の順番は電気陰性度の順番と一致します.

 

特にフッ素は電気陰性度が全元素中最大で最も電子を引き寄せやすいです.

 

より酸化力の強い物質は,それよりも酸化力の弱い物質から電子を奪い取ります

 

塩化物イオンを含む水溶液から塩素が発生したということは,塩化物イオンが酸化されたということですから,塩化物イオンよりも強い酸化力を持つフッ素がこの問の答えになります.

 

問3

塩素は水に溶けるとCl_2+H_2O \rightarrow HClO+HCl(本当は平衡反応)なる反応を起こします.

 

このHClO(次亜塩素酸)がいわゆる漂白剤の主成分で,非常に酸化力が強いです.

 

最近はアルコール消毒と並んで次亜塩素酸水溶液を消毒液として使うこともありますが,あれ使うと臭いし手が荒れるんですよね...

 

また何もしなくても2HClO \rightarrow 2HCl+O_2のようにだんだん分解してしまうので,保管は冷暗所で,早めに使い切るのが良いです.

 

問4

電気分解では,陽極で酸化反応,陰極で還元反応が起こります

 

何が主に電極で反応するかは次のことが言えます.

  • 陽極・・・陽極室の溶液の中で最も酸化されやすいもの
  • 陰極・・・陰極室の溶液の中で最も還元されやすいもの

と書きましたが,この問はいきなり例外です(笑)

 

それは陽極反応です.令和2年度の化学のところで話したと思うのですが,電極電位の話になります.

 

手元のアトキンス物理化学要論の付録によると

 

Cl_2+2e^- \rightarrow 2Cl^-の電極電位は+1.36 V

 O_2+4H^+ + 4e^-2H_2O \rightarrow 2H_2Oの電極電位は+1.23 V

 

らしいです.これは逆に言えば, 2Cl^- \rightarrow Cl_2+2e^- よりも2H_2O\rightarrow O_2+4H^+ + 4e^-の方が起こりやすいことを意味します

 

ですが,実際には陽極では酸素ではなく塩素が発生します.

 

これは過電圧が2H_2O\rightarrow O_2+4H^+ + 4e^-の方が大きいためです

 

過電圧とは電気分解を起こすのに必要な理論値と実際の値との差のことです.

 

ややこしくなりましたが,”熱力学的に進行しやすい”\neq”反応しやすい”というのが言いたかったことです.

 

問題Ⅲ

問1(a),(b)

残念ながら暗記項目なので書くことがありません...

 

問1(c),(d),(e)

構造異性体を書きだすときは

  • 不飽和度の確認
  • 主鎖の大きさごとに異性体書き出し

を意識します.

 

不飽和度は二重結合の数です.(不足している水素の数)÷2で計算します.

 

飽和している時水素の数は2×(炭素の数)+2なので,例えば水素の数が2個少ない場合,不飽和度は2÷2で1になります.

 

この問の場合は,不飽和度0なのでアルカンの構造異性体を書きだします.

 

異性体書き出しで怖いのは,異性体の書き漏れですが,主鎖を意識して全てのパターンを書きだします

 

そのパターンの中で同一のものを省けば全ての異性体を書きだすことができます.

 

ペンタンの場合は,主鎖の炭素数が5,4,3の異性体が考えられるので,メチル基を色々付け替えてみる,という感じになります.

 

問2

カルボン酸とアルコールの反応に関する問題です.

 

断水縮合反応ですが,別名フィッシャーエステル合成反応と言います.

 

(d)は平衡の移動に関して聞かれています.

 

平衡反応なので水を加えてしまうと逆反応が優勢になってしまいます.また,硫酸は酸触媒として働くので新たに加えても反応速度には影響がありません.

 

まとめ

平成31年の化学を解説してみました.一部ややこしい話をしてしまいました...

 

どうしても分からない場合はtwitterで気軽に質問してください!

 

最後まで見ていただきありがとうございました!