東北大学編入 tyakanobuの編入体験記

東北大学工学部編入学試験体験記

令和2年度東北大学工学部編入学試験化学 解答

いつも見てくれてありがとうございます!高専生ちゃかのぶです.

 

今回は令和2年度東北大学工学部編入学試験の化学(共通)の解説をしたいと思います!

 

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

大問Ⅰ

以下,系に入る熱を正の熱とします.

問1(ア)

クラウジウス-クラペイロンの式に関する問題です.クラウジウス-クラペイロンの式は,蒸気圧と温度の関係を表す式です.

 

モル蒸発エントロピーをモル蒸発エンタルピーで表せ,という問題です.モル蒸発エンタルピーは,蒸発の際に系に入る熱に等しいので,エントロピーの定義式S=\frac{q}{T}qにモル蒸発エンタルピーを代入すればOKです.

 

問1(イ)

化学では最もよく出てくる式といっても良い式ですね...pV=nRTです!

 

ただし,V_{m,g}はモル体積,すなわち1 mol当たりの体積なので,物質量nは1とします.

 

ちなみに,水の場合は水蒸気とどのくらい体積が違うかというと,水 1 molは18 mL,水蒸気1 molは22.4×10^3 mLなので,\frac{22.4×10^3}{18}=1244になります.

 

問1(ウ)(エ)

個人的には\frac{dp}{p}=d\log_e{p}は少し気持ち悪いです(笑).

 

この式は\frac{d}{dx}\log_e{x}=\frac{1}{x}を変形したものなのですが,微分記号を分数のごとく扱っているのがどうも気持ち悪いんですよね...

 

問2(a)

クラウジウス-クラペイロンの式を積分します.

 

Tでの積分は自然にできると思うのですが,d\log_e{p}での積分はちょっと違和感を感じると思います.

 

ですが,\log_e{p}はこれで一つの文字と考えましょう\int d\log_e{p}不定積分\log_e{p}ということです.積分区間\log_e{p_i}から\log_e{p_f}とします.

 

積分したら,対数の差に関する性質を使って式を整理します.

 

問2(b)

クラウジウス-クラペイロンの式を使うのかと思いきや,\Delta_{vap}S=\frac{\Delta_{vap}H}{T}を使います.

 

モル蒸発エンタルピーの値と,蒸発させる水の量が示されているので,蒸発するときに系に入ってくる熱量を求め,絶対温度で割ってあげれば系のエントロピー変化が分かります.

 

問3

クラペイロンの式から考察します.

 

前述したとおり,液体から気体に変化するときは体積変化が非常に大きいです.このときエントロピー変化の値も大きいのですが,体積変化の値に比べるとそこまででもないです.

 

このため,液体→気体のときの\frac{dp}{dT}は小さくなってしまいます.

 

それに比べると,固体→液体の場合は体積変化はそんなに大きくないので,相対的に液体→気体の場合よりも\frac{dp}{dT}が大きくなります.

 

大問Ⅱ

問1(ア)(イ)

残念ながら,これらは暗記です...地殻中の元素の割合は,僕は ”おっしゃるてか(O Si Al Fe Ca)” で覚えました.

 

銑鉄や鋼は炭素含有量とセットで覚えておくと良いです.僕は,昔”鋼の錬金術師”が好きで単行本を買っていたのですが,裏表紙にこの話が載っていたのを今だに覚えています(笑)

 

問1(ウ)

こちらも体心立方格子が分かっていないと厳しいです.体心立方格子は立方体の中心に原子1個,角に原子\frac{1}{8}個入った単位格子です.

 

\frac{1}{8}個というのは,立方体の角は8つの立方体に共有されていることから分かります.

 

問1(エ)

単位格子の質量をどう求めるかがカギです.そのためには,鉄原子1個の質量を求める必要があります.

 

モル質量は,その原子1 mol(6.0×10^{23}個)分を意味するので,逆に言えばモル質量を6.0×10^{23}で割れば原子1個分の質量がでてきます.

 

単位格子の質量が分かったら,単位格子の体積で割ります.

 

問1(オ)

体心立方格子の場合,立方体の角にある原子は立方体の中心にある原子としか接していないことに注意してください.

 

頭の中で考えるのは無理があるので,必ず解答のような図を描いてください.

 

問題で平方根の値が与えられているのはここで使うためです.

 

問1(カ)

こちらも暗記です...

 

ステンレスはとても身近な合金です.水まわりの金属は大体ステンレスだと思います.

 

クロムと聞くと毒性の強そうなイメージがありますが,悪さをするのは+6に酸化されたクロムイオンで,金属クロム自体に毒性はありません.むしろ役に立っています.

 

問2

解答にも書いたとおり,酸化鉄は還元されるので,酸化剤です.酸化剤と反応するのは必ず還元剤ですから,一酸化炭素は還元剤です.還元剤は必ず酸化されるので,生成物は二酸化炭素になります.

 

反応物と生成物が分かれば,あとは係数合わせです.それぞれの物質の係数をabcdなどとおき,反応式の左辺と右辺で原子数が一致するように係数を決定します.

 

ほとんどの場合,未知数の数に対して方程式の数が足りないので,いずれかの文字に適当な数値を代入して他の係数を決定します.

 

この時代入する数値ですが,なんでも良いです.答えは同じになります.

 

ただ,計算のしやすさからなるべく分数がでないように係数を決めると早く,簡単に答えが求まります!

 

問3(a)

高校化学ではイオン化系列というものが出てきて,暗記して問題の条件に当てはめると思うのですが,イオン化系列とは一体何をもとに決めているのでしょうか?

 

それは標準電極電位です.2H^+ + 2e^- → H_2という反応を起こす電極(標準水素電極)の電位を0とした時の,他の電極の電位のことです.

 

標準水素電極に対して,Fe^{2+}が存在する溶液に浸したFe電極を接続したときの電位差がFe^{2+}+2 e^- →Feの標準電極電位というわけです.

 

標準電極電位の表に載っている半反応式は必ず還元反応ですが,次のことが言えます.

 

  • 標準電極電位が正 → その還元反応が進行しやすい
  • 標準電極電位が負 → その還元反応の逆反応が進行しやすい

 

この関係は,\Delta_rG = -nFEという関係式から分かることで,Eが正なら反応ギブズエネルギー変化が負,つまりその反応は熱力学的に進行しやすいと言えます.

 

Fe^{2+}+2 e^- →Feの標準電極電位は-0.44 V,つまり逆反応が進行しやすいです.これは鉄は水素よりもイオンになりやすいということを意味します.

 

したがって鉄を酸に浸すと,鉄は水素イオンを追い出して鉄イオンになり,水素イオンは仕方なく水素として出ていく,というわけです.

 

高校化学のイオン化傾向とは,標準電極電位が低い方を左に,高い方を右に並べたものなんです!

 

問3(b)

(a)の半反応式を組み合わせて全反応式を作り,係数から考察します.

 

この場合,水素1 mol が発生するためには鉄1 mol が必要です.

 

問3(c)

ここでも標準電極電位の表が役に立ちます!ネットで検索してみてください.

 

Zn^{2+}+2 e^- →Znは -0.76 V,Sn^{2+}+2 e^- →Snは -0.14 Vです.

 

Fe^{2+}+2 e^- →Feは -0.44 Vだったので,亜鉛は鉄よりもイオンになりやすく,スズは鉄よりもイオンになりにくいことが分かります.

 

鉄よりもイオンになりにくいスズでめっきしたブリキは,鉄が最初に酸化されやすいので,トタンよりも錆びやすいです.

 

大問Ⅲ

問1

ベンゼンスルホン酸は無機酸ほどではありませんが,有機酸の中では非常に強い方です.

 

フェノールは有機酸の中ではかなり弱い方です.なので溶かしたいときはNaOHなどの強い塩基を入れてあげます.

 

酸性度の順番は大体頭の中に入れておくと役に立ちます.

 

トルエンはよく溶媒として使われます.過マンガン酸カリウムなど,非常に強い酸化剤と反応させることで安息香酸に変えることができます.なんでCH3からCOOHになるのかは僕もよく分かりません(笑)

 

酸性度に関する余談ですが,実はケトンやアルカンといった一見酸にならなそうな化合物についても酸性度を考えることができます.興味のある方は”pKa 炭化水素”で調べてみてください!

問2

オルト-パラ配向性,メタ配向性が分かっているかが問われています.これに関しては分かりやすいサイトがたくさんあるので,そちらを見てみてください!

 

構造異性体の数を聞かれた時は,一見違いそうでも同じ構造に注意してください.

 

裏返したり,回転させてみて完全に構造が一致したら同一物です.

 

問3(a)(b)

こちらは暗記になります.スズと濃塩酸を組み合わせた還元剤は,ニトロ基の還元によく使われます.

 

問3(c)

水と有機層の分離で,有機層はどちらかと聞かれた時は,クロロメタンや四塩化炭素などのハロアルカンを除き上に有機層が来ます!

ハロアルカンだけは特別で,他は上にくると覚えちゃってOKです.

 

問3(d)

混成軌道に関しても,分かりやすいサイトがたくさんあるのでそちらをどうぞ!(笑)

 

問3(e)

共鳴は大学化学の範囲なので中々難しいと思います...

 

共鳴構造は,分子の構造をより正確に示すための方法です.⇔を使って表されますが,共鳴構造はそれぞれ行ったり来たりしているわけではなく,全て重なり合った状態で分子は存在しています.

 

共鳴構造を書くときには,電子対の移動を一緒に書きます.

 

アニリンの場合,窒素が非共有電子対を持っているので,この非共有電子対がベンゼン環状を動くようになります.

 

解答に書いた共鳴構造は,窒素上の非共有電子対がベンゼン環のπ共役系(6つのp軌道の重なり)に流れ出ている様子を表しています

 

炭素上に電子対が乗っかっている構造はよく書きます.

 

また,あくまでもオクテット測(原子の最外殻の電子数は8個まで)を満たしていることが前提です.炭素上に電子が6個しかない構造はダメです.

 

先ほど分子は共鳴構造が重なり合った状態で存在していると書きましたが,それぞれの共鳴構造がどのくらい分子の構造に寄与しているかは様々です.

 

例えば解答の共鳴構造の左から二つは,ベンゼン環という安定な構造を有しているので,他の3つよりも大きく分子の構造に寄与しています

 

電子が非局在化(一か所に留まっていない,広がっている)している構造は安定で,分子の構造に大きく寄与しています.

 

問3(f)

前述したとおり,アニリンの窒素上の非共有電子対はベンゼン環上に流れています.

 

水素イオンを受け取るには電子対が必要ですが,電子対はいつでも窒素上にいるわけじゃないので,水素イオンを受け取りにくくなってしまいます

 

一方,脂肪族アミンの窒素上の非共有電子対は共鳴の効果が0なので,いつでも窒素上にいます.つまり,水素イオンを受け取りやすいです.

 

このため,脂肪族アミンはアニリンよりも塩基性が強くなります.

 

問3(g)

無水酢酸はアセチル化によく使われる試薬です.

 

アセトアニリドとベンズアミドをごっちゃにしないよう注意です!

まとめ

大学化学が一部出ているので,専門外の方には難しいかもしれません...

 

今回は頑張って解説したつもりですが,どうしても理解できないところがあるかと思います.

 

そのときは,TwitterのDMで直接僕に質問してくれても構いません!

 

最後まで見てくれてありがとうございました!頑張ってください!