平成31年度東北大学工学部編入学試験化学解答
みなさんこんにちは ちゃかのぶです!
もうそろそろ3月になろうとしていますが,編入試験に向けた計画はたてていますか?
3月は高校受験や大学受験でいうところの8月(夏休み)に相当する月です.後悔の無い春休みになることを願っています!!
今回は平成31年の化学の解説をしていきます
前回の記事はこちら↓
問題Ⅰ
問1 ア
化学熱力学になります.
エンタルピーはで定義されます.こればかりは覚えるしかありませんが,なぜこのように定義するのかと言えば,こう定義すると嬉しいことがあるからなんです.
定圧下における系のエンタルピー変化は
になります.また,熱力学第一法則を適用すると,なので
になります.定圧下における仕事Wはなのでこれを代入すると
が得られます.つまり,エンタルピー変化は定圧下において系に出入りする熱に等しいと言えます.
というのがよく言われる説明ですが,熱力学第一法則の変形した式からも左辺が定圧化における熱に等しいことはすぐに分かります.
問1 イ~オ
ある化合物の生成反応を別の式から作りたいときは,まず反応式の左辺を完成させることを目標にします.
この問の場合,求めたいのはですが,左辺に炭素1個,水素2個あるので,二酸化炭素の生成反応+水の生成反応×2で炭素と水素を揃えます.
そしたらメタンの燃焼反応の式の両辺を-1倍して今得た式に加え整理すると目的のメタンの生成反応が得られます.
高校化学ではなどと表記します.意識しないかもしれませんが,やはその化合物の持つエネルギー(結合エネルギー)を意味しています.
このため,ここまでの計算のように各化合物の化学式を代数のように扱えるわけです.
問2,問3,問4(a)
問1イ~オに示したように,まずは反応式の左辺を完成させることを目標にします.
問2の解答をよく見ていただきたいのですが,炭素や水素の係数を決めると酸素,水,二酸化炭素はベンゼンの燃焼反応における係数と一致することが分かります.
大抵の問題では最終的に丁度良く酸素,水,二酸化炭素は打ち消されます.
問4(b)
"共役"がキーワードです.
電子は一か所に留まっているよりも広がっていた方が安定になります.このため,ベンゼンのようにp軌道が環状に連なっている構造を持つ化合物はより安定化します.(全てのp軌道の間で電子移動が可能になるため)
シクロヘキサン,シクロヘキセン,ベンゼンの中ではシクロヘキサンが最も安定なのでシクロヘキサンの持つエネルギーを0とすると,シクロヘキセン×3とベンゼンの持つエネルギーの大小関係は解答に書いた図のようになります.
不安定であるということは,それだけ大きな熱を蓄えているということですから,シクロヘキセン×3の水素化に伴って出てくる熱は,ベンゼンの水素化に伴って出てくる熱よりも大きいはずです.
問題Ⅱ
問1
ハロゲンは周期が大きくなるほど分子間力が強くなります.このため周期が大きくなるにつれて標準状態で気体→液体→固体で存在することになります.
問2
ハロゲンは周期が小さいほど酸化力が強くなります.
酸化力とは電子を引き抜く力の大きさことです.酸化力の順番は電気陰性度の順番と一致します.
特にフッ素は電気陰性度が全元素中最大で最も電子を引き寄せやすいです.
より酸化力の強い物質は,それよりも酸化力の弱い物質から電子を奪い取ります.
塩化物イオンを含む水溶液から塩素が発生したということは,塩化物イオンが酸化されたということですから,塩化物イオンよりも強い酸化力を持つフッ素がこの問の答えになります.
問3
塩素は水に溶けると(本当は平衡反応)なる反応を起こします.
このHClO(次亜塩素酸)がいわゆる漂白剤の主成分で,非常に酸化力が強いです.
最近はアルコール消毒と並んで次亜塩素酸水溶液を消毒液として使うこともありますが,あれ使うと臭いし手が荒れるんですよね...
また何もしなくてものようにだんだん分解してしまうので,保管は冷暗所で,早めに使い切るのが良いです.
問4
電気分解では,陽極で酸化反応,陰極で還元反応が起こります.
何が主に電極で反応するかは次のことが言えます.
- 陽極・・・陽極室の溶液の中で最も酸化されやすいもの
- 陰極・・・陰極室の溶液の中で最も還元されやすいもの
と書きましたが,この問はいきなり例外です(笑)
それは陽極反応です.令和2年度の化学のところで話したと思うのですが,電極電位の話になります.
手元のアトキンス物理化学要論の付録によると
の電極電位は+1.36 V
の電極電位は+1.23 V
らしいです.これは逆に言えば,よりもの方が起こりやすいことを意味します.
ですが,実際には陽極では酸素ではなく塩素が発生します.
これは過電圧がの方が大きいためです.
過電圧とは電気分解を起こすのに必要な理論値と実際の値との差のことです.
ややこしくなりましたが,”熱力学的に進行しやすい””反応しやすい”というのが言いたかったことです.
問題Ⅲ
問1(a),(b)
残念ながら暗記項目なので書くことがありません...
問1(c),(d),(e)
構造異性体を書きだすときは
- 不飽和度の確認
- 主鎖の大きさごとに異性体書き出し
を意識します.
不飽和度は二重結合の数です.(不足している水素の数)÷2で計算します.
飽和している時水素の数は2×(炭素の数)+2なので,例えば水素の数が2個少ない場合,不飽和度は2÷2で1になります.
この問の場合は,不飽和度0なのでアルカンの構造異性体を書きだします.
異性体書き出しで怖いのは,異性体の書き漏れですが,主鎖を意識して全てのパターンを書きだします.
そのパターンの中で同一のものを省けば全ての異性体を書きだすことができます.
ペンタンの場合は,主鎖の炭素数が5,4,3の異性体が考えられるので,メチル基を色々付け替えてみる,という感じになります.
問2
カルボン酸とアルコールの反応に関する問題です.
断水縮合反応ですが,別名フィッシャーエステル合成反応と言います.
(d)は平衡の移動に関して聞かれています.
平衡反応なので水を加えてしまうと逆反応が優勢になってしまいます.また,硫酸は酸触媒として働くので新たに加えても反応速度には影響がありません.
まとめ
平成31年の化学を解説してみました.一部ややこしい話をしてしまいました...
どうしても分からない場合はtwitterで気軽に質問してください!
最後まで見ていただきありがとうございました!