東北大学編入 tyakanobuの編入体験記

東北大学工学部編入学試験体験記

平成30年度東北大学工学部化学・バイオ工学科編入学試験解答

こんにちは!ちゃかのぶです.

 

今回は平成30年度の専門化学の解説をしたいと思います.

 

前回はこちら↓
tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1

暗記項目になってしまいます...

 

臭化銀は塩化ナトリウム型構造をとります.

 

暗記とは言いましたが,半径比則という考え方があります.すべての結晶に当てはめられるわけではありませんが,面白いと思うのでぜひ調べてみてください.

 

問2

化学熱力学で最も重要な式の一つである\Delta G^\circ = -RTln{K}を使います.

 

溶解平衡定数Kspが与えられているのでこれを使います.

 

問3

標準水和エネルギー,高専では習わなかったので調べてはみたのですが有用な情報は得られませんでした...

 

AgBrの標準水和ギブズエネルギーを求めろとのことですが,与えられたAg+とBr-の標準水和ギブズエネルギーを足すぐらいしか思いつきませんでした.

 

和はAgClの標準水和ギブズエネルギーからそこまで大きくずれているわけではないのでおそらく,これで良いと思います...

 

何より後の問でつじつまが合うので(笑)

 

アトキンス物理化学(概論じゃない方)も見たのですが,やはり標準水和エネルギーは載っていませんでした.

 

可能性があるとすればシュライバー・アトキンス無機化学でしょうか.手元に無いので分かりませんが,今度図書館に行く機会があれば見てみようと思います!

 

問4

ここまででAgClの標準溶解ギブズエネルギー,標準水和ギブズエネルギーが分かっていますが,標準格子ギブズエネルギーだけが分かりません.

 

イオン結晶の溶解とはどういう現象だったかというと,水分子がイオン結晶の陽イオンや陰イオンを水和し,イオンを引き剥がす現象でした.

 

つまり,「溶解=水和+結晶構造の分解」です.

 

なのでボルン-ハーバーサイクルを構成と書いてありますが,結局は解答に書いたような\Delta_{sol}G^\circ = \Delta_{hyd}G^\circ + \Delta_{lat}G^\circが成り立ちます.

 

問5

AgClとAgBrのKspの差が\Delta_{hyd} G^\circ\Delta_{lat} G^\circのどちらに起因するのかとのことですが,\Delta_hyd} G^\circの方だと思います.

 

AgClの方がAgBrよりも\Delta_{hyd} G^\circが小さいからです.特に深い理由ではありません...

 

これはAgClの方が水和しやすいことを意味しているのだと思います.

 

問6

Kspの定義は難溶性塩の飽和溶液中でのカチオンとアニオンの濃度の積でした.

 

したがってKspが小さいということは,溶液中のカチオン,アニオンの濃度が低くても飽和に達してしまう(溶けにくい)ということです.

 

AgBrはKspがAgClに比べてはるかに小さいため,AgClより水に溶けにくいです.

 

問7

Ksp = [Ag^+[Cl^-]]に値を代入するだけです!

 

問8

溶解度積は温度に依存する平衡定数であることを念頭においてください.

 

飽和状態では [Ag^+],[Cl^-]の積がKspに等しくなっています.温度変化が無ければKsp=一定ですから,さらに塩化物イオンを追加するとKspを一定に保つために [Ag^+]や[Cl^-]を減らす必要があります.

 

そこでAgClを沈殿させて,Kspを一定に保とうとするわけです.共通イオン効果と呼ばれます.

 

問9

AgClは塩化物イオンがたくさんあると錯イオンを形成して溶解します.

 

陽イオンの定性分析のあたりでよく見かける話です.他にも特徴的な反応が書いてあったりするので,余裕があれば覚えておくと良いかもしれません.

 

問10

AgBrの結合は完全なイオン結合でなく,少し共有結合が混ざっています.

 

上述しましたが,溶解現象はイオンの水和から始まるので水分子が水和しやすい,イオン性の強い物質ほど溶けやすいと言えます.

 

問題Ⅱ

問1

Cahn–Ingold–Prelog則という方法に従って命名します.

 

詳しくは有機化学の専門書や,ネットで検索してみてください!

 

Cahn–Ingold–Prelog則のうち”多重結合原子は同じ数の単結合の原子と等価である”が一番分かりにくいと思います.これは例えば,C=Oという結合ならO-C-O-Cというように分解できるという意味です.

 

二重結合炭素は酸素と二本の結合を作っているので,二個の酸素と結合しているのと等価である,という感じでしょうか...(分かりにくくてごめんなさい)

 

問2

与えられた分子式C4H9Fの構造異性体を書き出せとのことです.

 

水素の数を調べると,炭素数の2倍+1個なのでフッ素で一か所置換されたアルカンであることが分かります.

 

したがって炭素数4のアルカンの構造異性体を全て書き出し,フッ素を配置します.

 

不斉炭素は2-フルオロブタンの2位の炭素です.

 

問3(a)

酸の共役塩基が安定であればあるほど,その酸は酸性度が高くなります.

 

与えられた4個の化合物の中では,シクロヘキサノールのみ,共鳴構造式が書けません.したがって最も酸性が弱いです.

 

他のフェノール誘導体の中ではp-クロロフェノールが最も酸性が強いです.これは塩素が誘起的に共役塩基の酸素上の電子を引き付けて非局在化するためです.

 

p-メトキシフェノールは真逆で,メトキシ基は電子供与基なので共役塩基が不安定化され酸性が弱くなります.

 

問3(b)

カルボン酸の場合,α炭素に電子求引性の置換基が結合していると酸性が強くなります.

 

また,電子求引基の数が多いほど酸性が強くなります.トリフルオロ酢酸のpKaは0.23で,かなり強めの酸です.

 

問4

水素化リチウムアルミニウムはヒドリドイオンH^-を生じてカルボン酸やアルデヒドエステルをアルコールに還元する試薬です.

 

水素化リチウムアルミニウムをエステルを反応させるとエステル結合の右と左の構造を持つ別々のアルコールが生じます.

 

他にもヒドリド還元剤として水素化ホウ素ナトリウムも使われますが,こちらは水素化リチウムアルミニウムよりは弱く,エステルを還元することはできません.

 

問5(a)

カルボカチオン中間体を考えればOKです.第1級カルボカチオンは第2級カルボカチオンよりも不安定で生成速度が遅い...という論理です!

問5(b)

化合物Eを主生成物として得るにはC6H11-CH2CH3の赤字の炭素の部分に+が来るような中間体が生じやすくなれば良いので,用いるべきアルケンはすぐに分かります!

 

問5(c)

Wittig反応という有名な反応です.C=OをC=Cに変換する便利な反応です.このためテストにはよく出題されます.

 

問6

化合物(a)はオルトパラ配向の置換基が二個結合しているので少し迷いますが,このような時は置換基効果がより強い方の置換基から見たオルト位,またはパラ位がニトロ化されます.

 

化合物(b)の場合,ニトロ基は強い電子求引基なのでニトロ基の結合したベンゼン環では芳香族求電子置換反応は起こりません.

 

化合物(c)のベンゼン環のうち,端のベンゼン環のメタ位か,真ん中のベンゼン環のメタ位かで迷うと思います.

 

しかしカルボニル基は電子を引き付けるので真ん中のベンゼン環は端のベンゼン環に比べて電子密度が低下しています.このためモノニトロかされるのは端のベンゼン環のメタ位になります.

 

まとめ

仙台に来てからブログの更新スピードがかなり落ちていると思います...ごめんなさい!

 

受験が近づいてきて焦りが出てきている方もいると思いますが,その気持ちは自分だけが感じてるものではないです.全ての受験生が感じていることです.

 

メンタルの管理も立派な受験です.人と話をするとか,少し運動したりしてリフレッシュすると良いと思います.

 

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