東北大学編入 tyakanobuの編入体験記

東北大学工学部編入学試験体験記

平成31年度東北大学工学部編入学試験物理解答

こんにちは!ちゃかのぶです!

今回は平成31年度の東北大学工学部編入学試験物理の解答解説をします.

平成31年度の物理は問題Ⅰから問題文が多くてうんざりしそうですね...

 

前回の記事はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1(a)

水平面状での単振動の運動方程式をたてて周期を出します.

 

単振動の周期自体は公式として知られていますが,ここでは公式だけ書くのではなく運動方程式を添えておくのが良いかなと思います.(理解していることをアピール

 

問1(b)

問1(a)で立てた運動方程式を実際に解きます.単振動の運動方程式は二階線形微分方程式です.

 

物理では解の形を予想して代入して係数を決定するのがスタンダードみたいですが,僕はいつも数学の授業で習った方法で解いています(笑).

 

一般解を求めて,初期条件から任意定数の値を決定するという方法です.

 

問2(a)

問1の系に液体による抵抗を加えた問題です.抵抗力の具体的な式が与えられているので,問1(a)の運動方程式の右辺にそのまま加えればOKです.

 

負符号が付いているのがポイントで,小球の運動方向とは逆向きに抵抗力が働いています.

 

問題の状況を図に起こしてイメージしてください!

 

問2(b)

減衰振動するための条件式をm,k,cを用いて表せと言われても検討が付かないと思います...

 

とりあえず,問題文で解の形をx(t)=Aexp(pt)と予想して良いと指示されているので素直に運動方程式に代入してみます.

 

そうするとpに関する二次方程式が得られますが,因数分解はできそうにないので解の公式を使います.

 

ここで,pは複素数であることに注意します.

 

ルートの中身が負ならpは複素数になるので,ルートの中身<0という条件を作ります.これが求めたかった条件式です.

 

低学年の頃に二次方程式のところで判別式なるものを習ったかと思いますが,あの考え方と似ていますね!

 

問2(c)

問2(b)で導出したpをx(t)=Aexp(pt)に代入します.

 

expの中身に和があるので分けてあげると,exp(\pm \sqrt{\frac{k}{m}-(\frac{c}{m})^2}it)という形が現れます.

 

指数関数の中に複素数が入っているといえばもうあれしかありません!オイラーの公式です!

オイラーの公式を使うと三角関数が出てきますが,三角関数の中身に注目すると時間tに係数が現れていると思います.

 

単振動でもそうですが,三角関数の中身の時間tの係数は角振動数ωに等しいです.

 

ωが分かれば周期は公式T=\frac{2\pi}{\omega}を使えばすぐに分かります.

 

実は減衰振動の運動方程式とその解については基礎物理学演習Ⅰ(永田一清 編,サイエンス社に掲載されています.

 

ωの中身の\frac{c}{m}減衰率と言うらしいです.

 

問2(d)

x(t)が指数関数と三角関数の積で表されているので計算が面倒ですが,頑張って計算していきます.

 

任意定数の値を決定していくのですが,問2(b)で与えられた解の形には定数が一つしかないので,このままでは上手くいきませんでした.

 

仕方ないので,cossinにそれぞれ別々の任意定数を付けてやりました.結局cosの方の任意定数は0になって消えるんですが...

 

問2(e)

こちらも計算がかなり長くなりますが,根気強くやっていきます.

 

まず,E(t)の式を決定します.E(t)は小球の運動エネルギー,ばねの弾性エネルギーの和なので,E(t)=\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}kx^2となります.

 

ここに,問2(d)で求めたxv=\frac{dx}{dt}を代入します.

 

次にE(t+T_2)を計算します.ここで\sin{\omega (t+T_2)}=\sin{\omega t}\cos{\omega (t+T_2)}=\cos{\omega t}に注意します.

 

また,exp(-\frac{2c}{m}(t+T_2))=exp(-\frac{2c}{m}t)exp(-\frac{2c}{m}T_2)と分解すると,exp(-\frac{2c}{m}T_2)の係数がE(t)に等しくなっていることが分かります!

したがってE(t+T_2)=E(t)exp(-\frac{2c}{m}T_2)というスッキリした式が得られます.

 

エネルギー変化の割合の式に代入してやると答えが得られます.

 

解答に示しましたが,exp(-\frac{2c}{m}T_2) \lt 1なので系のエネルギーは常に減少します.”減衰”と一致していますね.

 

問題Ⅱ

問1(a)

円柱導体を流れる電流による地場を求める問題です.

 

磁場を求めたい場合,アンペールの法則かビオ・サバ―ルの法則を使うことになるわけですが,この問ではアンペールの法則\oint_c \mathbf{H} \cdot d\mathbf{l}=Iを使います.

 

閉曲線Cは円柱導体と中心軸を共有する半径r(<a)の円とします.

 

右辺のIには閉曲線Cの内部を横切る電流を代入するのですが,そのままIを代入してはいけません

 

というのも,閉曲線Cの半径はr(<a)なので円柱導体を流れる電流Iのすべてが閉曲線Cを横切るわけではないからです.

 

そこで,電流密度i=\frac{I}{\pi a^2}をあらかじめ計算しておき,これに閉曲線Cが作る円の面積\pi r^2をかけます.

 

これで閉曲線C内部を横切る電流量が分かります.

 

問題1(b)

単位体積当たりの磁気エネルギーu_0 = \frac{1}{2}\mu H^2を利用します.

 

この場合,\muは導体の透磁率であることに注意してください!

ちなみに単位体積当たりの電場エネルギーはu_0 = \frac{1}{2}\epsilon E^2です.

 

単位体積当たりなので,u_0になんらかの微小体積をかけて積分する必要があるのですが,微小体積は計算できればなんでも良いです.

 

解答では非常に薄い(dr),高さが1のバームクーヘンの体積を利用しました.

 

バームクーヘン積分と似た感じですね.

 

バームクーヘンの体積は2\pi r drなので,これをu_0にかけてやるとバームクーヘンに蓄えられたエネルギーはdU=\frac{\mu I r^3}{4\pi a^4}drになります.

 

あとは0からaまで積分すればOKです.

 

問題1(c)

自己インダクタンスLと磁気エネルギーUの関係はU=\frac{1}{2}LI^2で表されます.

 

これと問1(b)で求めた式を比較すると単位長当たりの自己インダクタンスを表す式が得られます.

 

問2(a)

互いに向きが逆の2本の電流による磁場を求める問題です.

 

右ねじの法則を使うと分かりますが,この2本の電流がその間に作る磁場はどちらも紙面表から裏向きになります.

 

なので単純に,それぞれの電流による磁場を足せば良いです!

 

問2(b)

問1(b)と似た考え方を使います.2本の電流間に幅dx,長さ1の微小面積を考えます.

 

この微小領域を横切る磁束d\Phiは,この部分で発生している磁束密度Bに微小面積をかけた値に等しいです.

 

あとはd\Phi積分するのですが積分区間は0からdにすると導体の内部も含んでしまうので,aからd-aにしてください.

 

それから,透磁率は真空の値\mu_0を使ってください!

 

問3(c)

磁束\Phiと自己インダクタンスLとの関係は\Phi=LIで表されます.

 

最初はこれと問3(b)で求めた式を比較して終わり...としたのですが,ちょっと疑問が浮かびました.

 

問題文でインダクタンスLに添え字のiやeが付いているのに引っかかりました.

 

意味ありげなので調べてみたところ,内部インダクタンスなるものが存在することが分かりました...

 

これは電磁気学演習(山村泰道 北川盈雄 共著,サイエンス社に載っていなかったのでこの問題で初めて知りました(笑)

 

ここで求めた自己インダクタンスに,問1(c)で求めた自己インダクタンス×2を加える必要があります.円柱導体が2本あるためです.

 

問3

ほぼ同じ系の問題が電磁気学演習(山村泰道 北川盈雄 共著,サイエンス社に載っていたので対処できました...

 

電気鏡像で調べてみてください.

 

無限導体平面の上に+Qの電荷がある場合,その電荷による電場は平面導体に対して対称な位置に-Qの電荷を置いた時の電場と等しくなります.

 

これが電流にも応用できるらしいです.

 

鏡像としておく電流の向きは,平面導体の上にある電流の向きと反対にします.これは問2で考えた系と全く同じになります.

 

ただし,磁場の式のdは2hに置き換えます.

 

積分区間は悩むところですが,鏡像として置いた電流はあくまでも仮想的なものなので,aから2h-aではなく,aからhにします.

 

問1で求めた自己インダクタンスを加えるのを忘れないでください!

 

問題Ⅲ

問1

熱力学と力学の融合問題です.

 

このような問題では 圧力×面積=力 の関係をよく使うような気がします.

 

ばねによる弾性力とA内の気体の圧力との力のつり合いから圧力を計算します.

 

x=0で自然長になるように設定されているのは優しさかなと思いました(笑)

 

一方,温度は状態方程式を利用します.

 

Aの体積はすぐに分かるので温度もすぐに分かります!

 

問2

仕事の基本的な計算式はW=\int_a^b F(x)dxですが,熱力学ではこの式を少し変形した式をよく使います.

 

W=\int_a^b F(x)dx = \int_a^b \frac{F(x)}{S} Sdx = \int_a^b P(x) dVという形です.

 

力×変位=圧力×体積変化というわけです.

 

圧力×体積と言えば,状態方程式pV=nRTの右辺に出てきます.pVはエネルギーでもあるので,もちろんnRTもエネルギーです.

 

気体の持つエネルギーは二種類の表し方(pVとnRT)で表せるので,これらを等しいとおいたものが状態方程式という見方もできます.

 

pV=nRTは式そのものは簡単ですが,ちゃんと意味を持っています.よくやる変形の一つであるU=\frac{3}{2}nR\Delta T=\frac{3}{2}\Delta (pV)も自然に見えるかなと思います.

 

A内の気体が受け取った熱量は熱力学第一法則から間接的に求めます.

 

Q=nC_p\Delta Tが使えそうな気がしますが,外圧が一定でないため使えません

 

A内の気体の内部エネルギー変化はU=\frac{3}{2}R\Delta Tで簡単に求められます.x=x_2の時の温度は問1の求め方と同じ方法で分かります.

 

熱力学第一法則\Delta U = Q - WからQを求めることができます.

 

 問3

熱力学第一法則の式を立てて整理していくのが方針になります.

 

ヒーターはOFFになっているのでA内に熱の出入りはありません.なのでA内の気体がされた仕事をW'とすると\Delta U = W'が成り立ちます.

 

単原子分子理想気体なので\Delta U=\frac{3}{2}R\Delta Tが使えて,\frac{3}{2}R\Delta T = W'となります.

 

ピストンが静止した時の温度はpV=nRTから求めますが,圧力はピストンが静止した時の力のつり合いから求めます.

 

気体がされた仕事W'の方はやはり,\int P(x)dVを使います.

 

ただし,気体は圧縮されているので常にdV<0です.これに注意するとdV=S(-dx)が分かります.

 

また,バルブが開いているのでピストンには大気圧がかかっています.P(x)に大気圧を足すのを忘れないでください.

 

頑張ってW'を計算し,さらに頑張って\frac{3}{2}R\Delta T = W'を整理するとばね定数kを表す式が得られます(笑)

 

ただ一つ心配なのは,解答の式の分子に5-2fという形が含まれている点です.k>0なので5-2f>0ですが,整理するとf\lt\frac{5}{2}です.

 

A内の気体は最大でも2.5分1までしか圧縮できないことになりますが,何か意味があるのか,間違っているのか...あまり自身が無いです...

 

まとめ

 

平成31年の物理を解説してみました.

 

僕が受験した令和3年度東北大学工学部編入学試験の物理は,問題文の多さがこの年の感じに似ていた気がします. 結構大変でした(笑)

 

次回は化学です.最後まで見ていただきありがとうございました!