東北大学編入 tyakanobuの編入体験記

東北大学工学部編入学試験体験記

令和2年度東北大学工学部編入学試験物理 解答

こんにちは! 高専生ちゃかのぶです.

 

ブログ更新が滞ってしまいましたが,物理の解答の解説をしていきたいと思います!

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1(a)

剛体定滑車の時刻tにおける角速度ωを求める問題です.親切にも慣性モーメントがIと定義されているので,回転の運動方程式を立てて積分するだけでOKです!

 

回転の運動方程式の右辺に書く力のモーメントは,角速度ωの方向に回転を生じさせるような場合を正とします.

 

問1(b)

問題Ⅰの最初に書いてある前置きの中の,”糸と定滑車の間は滑らないものとする”がポイントです.

 

滑らないので,糸の他端の変位yは定滑車の回転した距離Rθ(回転角をθとしたときの弧の長さ)に等しくなります.

 

y=Rθの両辺を時間t微分すると\frac{dy}{dt}=\frac{dθ}{dt}になりますが,\frac{dθ}{dt}は問1(a)で求めた角速度ωに等しいです.

 

このようにして糸の他端yを時間tで表します.

 

さらに,yに長さLを代入し,糸が定滑車から離れるときの時刻を求めます.

 

あとは時刻tにおける糸の他端の速度\frac{dy}{dt}にこの時の時刻を代入すれば解が得られます.

 

問2(a)

今度は糸の一端に質量mのおもりが付いています.おもりは当然下降するはずなので,定滑車の回転は反時計回りを正,おもりの変位は鉛直下向きを正にすると解きやすいです.

 

もちろん,定滑車の回転は時計回りを正,おもりの変位は鉛直上向きを正にしても結局答えは同じになります.

 

回転の向きや変位の向きは自分の好きなように正の方向を決めて良いわけですが,あまり変な決め方をすると符号を間違えたりするので,基本的には物体が運動するであろう方向を正にすると僕は決めています.

 

糸は滑らないので,やはりy=Rθが成り立ちます.

 

Tを\frac{d^2y}{dt^2}で表すか,\frac{d^2y}{dt^2}をTで表すかは自由なので解答にあるような過程は必ずしも従う必要はありません!

 

また,\frac{d^2y}{dt^2}=\frac{mR^2}{mR^2+I}gや,T=\frac{I}{mR^2+I}mgといった,単位を意識した表記をするのがおすすめです!

 

gmgの前の分数は,分子と分母で単位が等しい(慣性モーメント)ため,無次元(単位が無い)になっています.

 

このため,左辺と右辺で単位が等しいことが一目で分かり,計算ミスなどに気づけます.

 

問2(b)

求めるものは,おもりが距離lだけ落下したときの時刻時刻tにおけるおもりの速度vです.

 

問1(a)で求めたおもりの加速度\frac{d^2y}{dt^2}=\frac{mR^2}{mR^2+I}gがあるので,この式をt積分時刻tにおけるおもりの速度v時刻tにおけるおもりの変位yを求めます.

 

これをt=の形に整理して,y=lを代入しおもりが距離lだけ落下したときの時刻を得ます.

 

この時刻を,時刻tにおけるおもりの速度$v$に代入して問2は終了です.

 

ここでも単位を意識した表記をしています!glの単位はm^2/s^2なので,平方根がついてちょうど速度の単位m/sになります.

 

問題Ⅱ

問1

問題Ⅱはガウスの法則\oint_S \mathbf{E} \cdot d\mathbf{S}=\frac{Q}{\epsilon_0}のオンパレードです.

 

点Oを中心とする半径rの球面を考えるのですが,0 \leqq r \lt ar \geqq aで球面内に存在する電荷が異なるので場合分けをしています.

 

0 \leqq r \lt a

体積電荷密度\rho_0が与えられているので,0 \leqq r \lt aでは\rho_0に半径rの球面の体積をかけて,球面内に存在する電荷とします.

 

また,電場は球対称に出ているので電場\mathbf{E}と面素ベクトルd\mathbf{S}は並行です.したがって

 

\oint_S \mathbf{E} \cdot d\mathbf{S}=\oint_S EdS=E\oint_S dS

 

となります.\oint_S dSは半径rの球面の面積を表すので,4 \pi r^2になります.

 

r \geqq a

考え方は上述した考え方と同じです.違うのはガウスの法則の右辺のQに代入する式です.

 

問題で与えられている球に存在する全ての電荷に等しい式を代入します.

 

なぜか電荷面密度σが与えられているので,これを足し忘れないようにしましょう!

 

図示は導いた式の形から考察します.0 \leqq r \lt aの時の電場の式は,Erに比例しているのでグラフは直線状になります.

 

一方r \geqq aのときはE\frac{1}{r^2}に比例しているので,0に漸近する曲線になります.

 

問2

電位を求めるためには電場を積分する必要があるので,まず電場を求めます.

 

0 \leqq r \lt aや,b \leqq r \lt cのときは,導体内部なので電場は0になります.

 

外部電場と導体内部で移動する自由電子による電場が相殺するためです(静電誘導).

 

a \leqq r \lt bのときはガウスの法則をそのまま適用します.

 

r \geqq cのときは静電誘導,電荷保存が分かっていればすぐに終わります.

 

解答問2(D)の最初の部分は導体球殻Bの内面と外面の様子をイメージしてもらうために書いたものなので省略しても良いです.

 

次は電位です.

 

+1 Cの電荷が電場によってある点から無限遠まで移動された時に,電場が電荷に対してした仕事が電位に等しいので,中心からrの距離にある点から無限遠まで電場を積分すれば電位が求まります.

 

ただし,領域によって電場が変わるので,そこに注意して電位の式を立式します.

 

電場は変位に対する電位の変化率(\mathbf{E} =- \nabla U)なので,導体内部(E = 0)では電位は定数になるはずです.

 

問3(a)

静電エネルギー密度の式\frac{1}{2} \epsilon_0 E^2電磁気学演習に載っていたのを覚えました...

 

導出がネット上に出ていますが,なんだかよく分かりませんでした(笑)

 

この式にa \leqq r \lt bの時の電場の式を代入して終了です.

 

問3(b)

問3(a)で求めた静電エネルギー密度を利用します.

 

静電エネルギー密度は単位体積あたりの静電エネルギーを表すので,球殻AとBの間で微小体積を考えてa \leqq r \lt b積分すればOKです.

 

微小体積の考え方ですが,この場合2通り考えられます.

 

一つは解答にあるように,半径r,厚みdrの薄い球殻を微小体積とするという方法です.

 

この"薄い"の意味は,球殻の内半径と外半径の差が無視できるほど薄いという意味です.こう断っておく置くことで,この球殻の体積を簡単に表すことができます.

 

二つ目は,三次元極座標系を使って三重積分する方法です.三次元極座標系におけるヤコビアンr^2\sin\thetaですが,これにdr,dθ,dφをかけたr^2sin\theta drd\theta d\phiは,座標(r,θ,Φ)の位置にある微小領域の体積を表します.

 

つまり,r^2\sin\theta drd\theta d\phiに静電エネルギー密度の式をかけたものは,微小領域に蓄えられた静電エネルギーを表します.

 

あとは0 \leqq r \leqq a-\pi \leqq \theta \leqq \pi0 \leqq \phi \leqq 2\pi積分します.

 

ですが,三次元極座標による方法は三重積分を伴うために計算量が多くなりがちです.

 

僕は薄い球殻を使う方がおすすめです!

 

問3(c)

問3(b)で全静電エネルギーを求めたので,公式U=\frac{1}{2}CV^2=\frac{Q^2}{2C}を用いて静電容量を計算します.

 

誘電率\epsilon_0の単位はF/mなので,解はちゃんと静電容量の単位になっています.

 

大問Ⅲ

問1

光の屈折の定義ですが,文字数が25字以内とかなり少ないので解答のような当たり前のことを書いてしまいました(笑)

 

媒質内では光の速度が変わることについても触れるべきだとは思ったのですが...

 

屈折角 \theta_1は屈折の法則をそのまま用いるだけでOKです.

 

問2(a)

まず屈折角\theta_2に対する入射角を求める必要があります.

 

点Oと点Pを結ぶ直線を斜辺とする直角三角形が見えるので,点Pでの入射角はすぐに求めることができます.

 

そうすると\sin{\theta_2}=\frac{n_A}{n_B}\cos{ \theta_1}が得られますが,

\cos{\theta_1}\sin{\theta_1}を用いて表現できるので,問1で求めた式を使います.

 

問2(b)

点Qでの入射角は点Pでの屈折角に等しいので,屈折の法則を使えばすぐです!

 

問3

まずは点Pでの臨界角を求めます.

 

全反射は入射角が臨界角より大きいときに起きる現象なので,これを式で表すと

 

\frac{\pi}{2}-\theta_1\gt(点Pでの臨界角)

 

となります.この式の両辺のsinをとり,\sin{(\frac{\pi}{2}-\theta)}=\cos{\theta}を用いて変形していくと最終的に

 

n_A^2-n_B^2\gt\sin^2{\theta_0}

 

を得ます.

 

最後は"入射角\theta_0に依らない "を式に表します

 

上述した式の右辺には\sin^2{\theta_0}がありますが,\sin{\theta}は必ず0から1の間の数値しかとりません

 

これを踏まえると,左辺が常に1より大きければ上式はいつでも成立します

 

なので求める条件はn_A^2-n_B^2\gt1になります.

 

三角関数が0から1までの値しかとらないというのは,結構よく使います!

 

問4

まず屈折角\theta_nですが,点Rにおける入射角を求める必要があります.

 

一見,媒質AとBの境界での全反射を全て追うことが必要そうですが,反射の法則により点Pの後の全反射での反射角は全て点Pでの入射角に等しいです.

 

点Pでの入射角は\frac{\pi}{2}-\theta_1なので,点Rでの入射角は\theta_1になります.

 

計算していくと,結局\theta_n$は$\theta_0に等しくなります.

 

次は光が通過する経路の長さln_A,L,\theta_0で表せとのことです.

 

問題の図にあるような,光の道筋の長さを直接計算するのはかなり厳しいと思います.

 

そこで,点Oから点Rに達するまでの時間を利用します.

 

つまり,媒質A内での光の速さvで距離l進む時間と,媒質Aの軸に平衡な光の速度成分v\cos{\theta_1}で距離L進む時間が等しいです.

 

これは中々イメージが難しいと思います...良い例えが思い浮かびません.

 

これを式に表すと,\frac{l}{v}=\frac{L}{v\cos{\theta_1}}になります.

 

ここでも\cos{\theta_1}が出ているので,\cos{\theta_1}=\sqrt{1-\sin^2{\theta_1}}を用いると最終的に

 

l=\frac{n_A}{\sqrt{n_A^2-\sin^2{\theta_0}}}L

 

が得られます.

 

 

 

問5

問5はどうしても分かりませんでした...ごめんなさい!

"点Pで全反射せず,点Qで全反射する"という式を目標にやってみたのですが,得られた2式を無理やり組み合わせてもうまくいきませんでした...

 

まとめ

更新が滞っていましたが,なんとか書ききることができました!

 

次回は一般化学の解説をしたいと思います!

 

最後まで見てくださりありがとうございました!