東北大学編入 tyakanobuの編入体験記

東北大学工学部編入学試験体験記

平成31年度東北大学工学部編入学試験物理解答

こんにちは!ちゃかのぶです!

今回は平成31年度の東北大学工学部編入学試験物理の解答解説をします.

平成31年度の物理は問題Ⅰから問題文が多くてうんざりしそうですね...

 

前回の記事はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1(a)

水平面状での単振動の運動方程式をたてて周期を出します.

 

単振動の周期自体は公式として知られていますが,ここでは公式だけ書くのではなく運動方程式を添えておくのが良いかなと思います.(理解していることをアピール

 

問1(b)

問1(a)で立てた運動方程式を実際に解きます.単振動の運動方程式は二階線形微分方程式です.

 

物理では解の形を予想して代入して係数を決定するのがスタンダードみたいですが,僕はいつも数学の授業で習った方法で解いています(笑).

 

一般解を求めて,初期条件から任意定数の値を決定するという方法です.

 

問2(a)

問1の系に液体による抵抗を加えた問題です.抵抗力の具体的な式が与えられているので,問1(a)の運動方程式の右辺にそのまま加えればOKです.

 

負符号が付いているのがポイントで,小球の運動方向とは逆向きに抵抗力が働いています.

 

問題の状況を図に起こしてイメージしてください!

 

問2(b)

減衰振動するための条件式をm,k,cを用いて表せと言われても検討が付かないと思います...

 

とりあえず,問題文で解の形をx(t)=Aexp(pt)と予想して良いと指示されているので素直に運動方程式に代入してみます.

 

そうするとpに関する二次方程式が得られますが,因数分解はできそうにないので解の公式を使います.

 

ここで,pは複素数であることに注意します.

 

ルートの中身が負ならpは複素数になるので,ルートの中身<0という条件を作ります.これが求めたかった条件式です.

 

低学年の頃に二次方程式のところで判別式なるものを習ったかと思いますが,あの考え方と似ていますね!

 

問2(c)

問2(b)で導出したpをx(t)=Aexp(pt)に代入します.

 

expの中身に和があるので分けてあげると,exp(\pm \sqrt{\frac{k}{m}-(\frac{c}{m})^2}it)という形が現れます.

 

指数関数の中に複素数が入っているといえばもうあれしかありません!オイラーの公式です!

オイラーの公式を使うと三角関数が出てきますが,三角関数の中身に注目すると時間tに係数が現れていると思います.

 

単振動でもそうですが,三角関数の中身の時間tの係数は角振動数ωに等しいです.

 

ωが分かれば周期は公式T=\frac{2\pi}{\omega}を使えばすぐに分かります.

 

実は減衰振動の運動方程式とその解については基礎物理学演習Ⅰ(永田一清 編,サイエンス社に掲載されています.

 

ωの中身の\frac{c}{m}減衰率と言うらしいです.

 

問2(d)

x(t)が指数関数と三角関数の積で表されているので計算が面倒ですが,頑張って計算していきます.

 

任意定数の値を決定していくのですが,問2(b)で与えられた解の形には定数が一つしかないので,このままでは上手くいきませんでした.

 

仕方ないので,cossinにそれぞれ別々の任意定数を付けてやりました.結局cosの方の任意定数は0になって消えるんですが...

 

問2(e)

こちらも計算がかなり長くなりますが,根気強くやっていきます.

 

まず,E(t)の式を決定します.E(t)は小球の運動エネルギー,ばねの弾性エネルギーの和なので,E(t)=\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}kx^2となります.

 

ここに,問2(d)で求めたxv=\frac{dx}{dt}を代入します.

 

次にE(t+T_2)を計算します.ここで\sin{\omega (t+T_2)}=\sin{\omega t}\cos{\omega (t+T_2)}=\cos{\omega t}に注意します.

 

また,exp(-\frac{2c}{m}(t+T_2))=exp(-\frac{2c}{m}t)exp(-\frac{2c}{m}T_2)と分解すると,exp(-\frac{2c}{m}T_2)の係数がE(t)に等しくなっていることが分かります!

したがってE(t+T_2)=E(t)exp(-\frac{2c}{m}T_2)というスッキリした式が得られます.

 

エネルギー変化の割合の式に代入してやると答えが得られます.

 

解答に示しましたが,exp(-\frac{2c}{m}T_2) \lt 1なので系のエネルギーは常に減少します.”減衰”と一致していますね.

 

問題Ⅱ

問1(a)

円柱導体を流れる電流による地場を求める問題です.

 

磁場を求めたい場合,アンペールの法則かビオ・サバ―ルの法則を使うことになるわけですが,この問ではアンペールの法則\oint_c \mathbf{H} \cdot d\mathbf{l}=Iを使います.

 

閉曲線Cは円柱導体と中心軸を共有する半径r(<a)の円とします.

 

右辺のIには閉曲線Cの内部を横切る電流を代入するのですが,そのままIを代入してはいけません

 

というのも,閉曲線Cの半径はr(<a)なので円柱導体を流れる電流Iのすべてが閉曲線Cを横切るわけではないからです.

 

そこで,電流密度i=\frac{I}{\pi a^2}をあらかじめ計算しておき,これに閉曲線Cが作る円の面積\pi r^2をかけます.

 

これで閉曲線C内部を横切る電流量が分かります.

 

問題1(b)

単位体積当たりの磁気エネルギーu_0 = \frac{1}{2}\mu H^2を利用します.

 

この場合,\muは導体の透磁率であることに注意してください!

ちなみに単位体積当たりの電場エネルギーはu_0 = \frac{1}{2}\epsilon E^2です.

 

単位体積当たりなので,u_0になんらかの微小体積をかけて積分する必要があるのですが,微小体積は計算できればなんでも良いです.

 

解答では非常に薄い(dr),高さが1のバームクーヘンの体積を利用しました.

 

バームクーヘン積分と似た感じですね.

 

バームクーヘンの体積は2\pi r drなので,これをu_0にかけてやるとバームクーヘンに蓄えられたエネルギーはdU=\frac{\mu I r^3}{4\pi a^4}drになります.

 

あとは0からaまで積分すればOKです.

 

問題1(c)

自己インダクタンスLと磁気エネルギーUの関係はU=\frac{1}{2}LI^2で表されます.

 

これと問1(b)で求めた式を比較すると単位長当たりの自己インダクタンスを表す式が得られます.

 

問2(a)

互いに向きが逆の2本の電流による磁場を求める問題です.

 

右ねじの法則を使うと分かりますが,この2本の電流がその間に作る磁場はどちらも紙面表から裏向きになります.

 

なので単純に,それぞれの電流による磁場を足せば良いです!

 

問2(b)

問1(b)と似た考え方を使います.2本の電流間に幅dx,長さ1の微小面積を考えます.

 

この微小領域を横切る磁束d\Phiは,この部分で発生している磁束密度Bに微小面積をかけた値に等しいです.

 

あとはd\Phi積分するのですが積分区間は0からdにすると導体の内部も含んでしまうので,aからd-aにしてください.

 

それから,透磁率は真空の値\mu_0を使ってください!

 

問3(c)

磁束\Phiと自己インダクタンスLとの関係は\Phi=LIで表されます.

 

最初はこれと問3(b)で求めた式を比較して終わり...としたのですが,ちょっと疑問が浮かびました.

 

問題文でインダクタンスLに添え字のiやeが付いているのに引っかかりました.

 

意味ありげなので調べてみたところ,内部インダクタンスなるものが存在することが分かりました...

 

これは電磁気学演習(山村泰道 北川盈雄 共著,サイエンス社に載っていなかったのでこの問題で初めて知りました(笑)

 

ここで求めた自己インダクタンスに,問1(c)で求めた自己インダクタンス×2を加える必要があります.円柱導体が2本あるためです.

 

問3

ほぼ同じ系の問題が電磁気学演習(山村泰道 北川盈雄 共著,サイエンス社に載っていたので対処できました...

 

電気鏡像で調べてみてください.

 

無限導体平面の上に+Qの電荷がある場合,その電荷による電場は平面導体に対して対称な位置に-Qの電荷を置いた時の電場と等しくなります.

 

これが電流にも応用できるらしいです.

 

鏡像としておく電流の向きは,平面導体の上にある電流の向きと反対にします.これは問2で考えた系と全く同じになります.

 

ただし,磁場の式のdは2hに置き換えます.

 

積分区間は悩むところですが,鏡像として置いた電流はあくまでも仮想的なものなので,aから2h-aではなく,aからhにします.

 

問1で求めた自己インダクタンスを加えるのを忘れないでください!

 

問題Ⅲ

問1

熱力学と力学の融合問題です.

 

このような問題では 圧力×面積=力 の関係をよく使うような気がします.

 

ばねによる弾性力とA内の気体の圧力との力のつり合いから圧力を計算します.

 

x=0で自然長になるように設定されているのは優しさかなと思いました(笑)

 

一方,温度は状態方程式を利用します.

 

Aの体積はすぐに分かるので温度もすぐに分かります!

 

問2

仕事の基本的な計算式はW=\int_a^b F(x)dxですが,熱力学ではこの式を少し変形した式をよく使います.

 

W=\int_a^b F(x)dx = \int_a^b \frac{F(x)}{S} Sdx = \int_a^b P(x) dVという形です.

 

力×変位=圧力×体積変化というわけです.

 

圧力×体積と言えば,状態方程式pV=nRTの右辺に出てきます.pVはエネルギーでもあるので,もちろんnRTもエネルギーです.

 

気体の持つエネルギーは二種類の表し方(pVとnRT)で表せるので,これらを等しいとおいたものが状態方程式という見方もできます.

 

pV=nRTは式そのものは簡単ですが,ちゃんと意味を持っています.よくやる変形の一つであるU=\frac{3}{2}nR\Delta T=\frac{3}{2}\Delta (pV)も自然に見えるかなと思います.

 

A内の気体が受け取った熱量は熱力学第一法則から間接的に求めます.

 

Q=nC_p\Delta Tが使えそうな気がしますが,外圧が一定でないため使えません

 

A内の気体の内部エネルギー変化はU=\frac{3}{2}R\Delta Tで簡単に求められます.x=x_2の時の温度は問1の求め方と同じ方法で分かります.

 

熱力学第一法則\Delta U = Q - WからQを求めることができます.

 

 問3

熱力学第一法則の式を立てて整理していくのが方針になります.

 

ヒーターはOFFになっているのでA内に熱の出入りはありません.なのでA内の気体がされた仕事をW'とすると\Delta U = W'が成り立ちます.

 

単原子分子理想気体なので\Delta U=\frac{3}{2}R\Delta Tが使えて,\frac{3}{2}R\Delta T = W'となります.

 

ピストンが静止した時の温度はpV=nRTから求めますが,圧力はピストンが静止した時の力のつり合いから求めます.

 

気体がされた仕事W'の方はやはり,\int P(x)dVを使います.

 

ただし,気体は圧縮されているので常にdV<0です.これに注意するとdV=S(-dx)が分かります.

 

また,バルブが開いているのでピストンには大気圧がかかっています.P(x)に大気圧を足すのを忘れないでください.

 

頑張ってW'を計算し,さらに頑張って\frac{3}{2}R\Delta T = W'を整理するとばね定数kを表す式が得られます(笑)

 

ただ一つ心配なのは,解答の式の分子に5-2fという形が含まれている点です.k>0なので5-2f>0ですが,整理するとf\lt\frac{5}{2}です.

 

A内の気体は最大でも2.5分1までしか圧縮できないことになりますが,何か意味があるのか,間違っているのか...あまり自身が無いです...

 

まとめ

 

平成31年の物理を解説してみました.

 

僕が受験した令和3年度東北大学工学部編入学試験の物理は,問題文の多さがこの年の感じに似ていた気がします. 結構大変でした(笑)

 

次回は化学です.最後まで見ていただきありがとうございました!

平成31年度東北大学工学部編入学試験数学解答

こんにちは!高専生ちゃかのぶです.

 

今回から平成31年度の東北大学工学部編入学試験の解答解説をしていこうと思います!

 

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1

媒介変数表示された関数の増減表,概形図示をする問題です.媒介変数表示された関数の増減表は,通常の増減表とは少し異なります.

 

y=f(x)で表された関数の増減表は,x,\frac{dy}{dx},yの値三行で構成されていますが,この問の場合t,\frac{dx}{dt},x,\frac{dy}{dt},yの値五行で構成します

 

増減の向きを表す矢印も異なるので,解答の増減表と通常の増減表との相違点を押さえておいてください.

 

微分係数の正負についてですが,微分係数が0で挟まれている区間では符号は常に正か負かどちらかになります.0,-,-,+,0などとはなりません.

 

また,微分係数は0を挟むと符号が逆転しますが,鞍点は例外です.

 

鞍点とは1階の微分係数が0であると同時に,2階の微分係数も0である点です.

 

グラフの形はまさに馬に取り付ける鞍のようです.

 

鞍点では微分係数が0を挟んでも符号が逆転しませんが,媒介変数表示されている関数は多くの場合2階微分を計算できても\frac{d^2x}{dt^2}=0が解けないので,xやyの値の変化から増減の符号を判断します.

 

次にグラフの概形ですが,媒介変数表示された関数の場合\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}を利用して各点での傾きを計算します.

 

注意するのは\frac{dx}{dt}=0である点で,傾きが無限大になります

 

傾き無限大というのは,y軸に並行であるということです.

 

問2

曲線の長さを求める問題です.公式L=\int_a^b{\sqrt{(\frac{dx}{dt})^2+(\frac{dy}{dt})^2}dt}を利用します.

 

半角の公式,2倍角の公式,\cos^2{x}+\sin^2{x}=1といった三角関数に関する重要公式を多用するので変形が面倒です...

 

(\frac{dx}{dt})^2+(\frac{dy}{dt})^2(f(t))^2の形に変形するのが目的です.

 

この問の場合,(\frac{dx}{dt})^2+(\frac{dy}{dt})^24 \cos^2{\frac{t}{2}}になりますが根号を外すときに\cos{\frac{t}{2}}の符号に注意します.

 

問3

直線y=\frac{-1}{2}x+1は丁度曲線CのX軸とy軸との交点を通るので積分区間は分かりやすいです.

 

あとはこの区間で曲線Cと直線y=\frac{-1}{2}x+1のどちらが大きいかですが,図を書くと一目瞭然です.

 

問題Ⅱ

問1

二つの球面が交線を持つには,一方の球面上のある点が他方の球面の内部にあれば良いです.

 

解答では原点から球面S_2の表面までの最短距離OP-rを利用しています.この距離は球面S_2上の点の極座標とも考えられます.

 

そういうわけで,OP-rが球面S_1の半径1より小さいなら球面S_2上のある点は球面S_1の内部に存在することになります.

 

問2

二つの球面の交線はどちらの球面も含んでいるので,球面S_1S_2の方程式の両方を満たします

 

球面の方程式をそれぞれf(x,y,z)=0g(x,y,z)=0とすると交線上の点は

f(x,y,z)=g(x,y,z)

を満たすはずです.

 

また,方程式の両辺を定数倍した式\alpha f(x,y,z)=0\beta g(x,y,z)=0も元の方程式と表す球面は同じなので

\alpha f(x,y,z)=\beta g(x,y,z)

も成り立つはずです.これを整理していくと,

\alpha f(x,y,z)-\beta g(x,y,z)=0

f(x,y,z)+kg(x,y,z)=0k=-\frac{\beta}{\alpha}

が得られます.高校数学の参考書には必ず載っている式です.

 

求めたいのは平面なので,2乗の項を消すのにk=-1としています.

 

実は受験の月に似た問題が掲載されています!

examist.jp

 

問3

 aとrの値が与えられているので,問2で求めた式に代入してみるとx=\frac{1}{2}が得られます.つまり,交線Cを含む方程式はx軸に垂直な平面,x=\frac{1}{2}上にあるということです.

 

また交線Cは球面S_1S_2の両方を含みますが,逆に言えば交線Cは点P,点Oからの距離が等しい点の集合と言うこともできます

 

従ってx=\frac{1}{2}を球面S_1またはS_2の方程式に代入すれば交線Cの方程式が得られます.

 

問4

まずは点Q (0,0, \sqrt{2})と交線C上の点Rを通る直線の方程式を求めます.そのためには方向ベクトルを決定する必要があります.

 

点Rをどう表すかが問題ですが,解答では極座標表示してみました.

 

もちろん,yまたはzを定数として交線C上の点を表しても良いです.

 

円の方程式を扱う時に極座標を使うと,\cos^2{x}+\sin^2{x}=1を使えるのでとても嬉しいんです.ただ,\cos\sinの前の係数を忘れないでください

 

 

方向ベクトルを決定したら,一旦媒介変数を使って直線の方程式を表します.

 

この問の場合,xがtの一次式で表されているので簡単にyとzをxの式で表すことができます.

 

そしたら\cos^2{x}+\sin^2{x}=1(交線Cの方程式)に代入してz=0とすると最終的に楕円の式が得られます.

 

問題Ⅲ

問1

計算問題なので解説は省略します.

 

問2(a)

計算問題なので解説は省略します.

 

問2(b)

行列のn乗を求めよという問題が出た時に,計算方法は二通り考えられます.

 

一つはケーリー・ハミルトンの定理を利用する方法です.

 

”ケーリー・ハミルトンの定理 n乗”で検索してみてください.n乗が行列の和で表せるのでとても便利です.

 

ですが,固有多項式固有値が必要なので2×2行列ならまだしも3×3行列になると結構計算が大変です...

 

二つ目はn乗の行列を予想して数学的帰納法で証明する方法です.

 

単純ですが,n乗の行列が予想できるかどうかにかかっているので悩みます(笑)

 

この問ではあらかじめB^2B^3を計算させられるので,出題者側としては数学的帰納法で解いてほしいのでしょうね...

 

B^2B^3だけでなくB^4も計算しないと予想は難しいかもしれません.

 

予想が最も難しいのは1行3列目の成分だと思います.

 

数学的帰納法におけるn=k+1の時の計算方法ですが,この場合n=kの時に成り立つと仮定した式の両辺に,左からBをかけることでn=k+1の場合を計算します.

 

まとめ

平成31年度数学の解説をしました.問題Ⅰ,問題Ⅱは何よりも図を書いて問題の状況を把握することがカギです!普段から図を書く癖をつけておくと良いです!

 

最後まで見ていただきありがとうございました!

令和2年度東北大学工学部化学・バイオ工学科編入学試験 解答

こんにちは~ 高専生ちゃかのぶです!

今回は東北大学工学部化学・バイオ工学科の専門科目の解説をしたいと思います

 

問題ⅠからⅣまで,二問を選択する形式ですが,僕は問題Ⅰ(無機,物理化学),問題Ⅱ(有機化学)を選択しました.なので,問題Ⅲ,Ⅳは解説しませんm(__)m.

 

前回の記事はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1

この年の問題Ⅰは一酸化窒素に関する問題です.一酸化窒素は揮発性有機化合物(VOC)と反応して光化学オキシダントの原因になる物質です.

 

問2

一酸化窒素のルイス構造は特殊です.窒素と酸素の価電子の総和が奇数になるので,不対電子があります.

 

不対電子を窒素,酸素のどちらに置くかですが,この場合は窒素に置きます.窒素の方が電気陰性度が小さいからです.

 

アトキンスに書いてあったのですが,反結合性軌道は電気陰性度の小さい原子の軌道の方が寄与が大きいので(そういう計算結果になる),反結合性軌道の電子は電気陰性度の小さい原子で見いだされる確率が高くなります.

 

問3

一酸化炭素の分子軌道エネルギー準位図です.NOの場合,準位図は酸素分子とほぼ同じものを使えます.

 

”ほぼ”というのは,問2で説明したように電気陰性度の小さい原子軌道はより反結合性軌道に寄与するので,窒素の原子軌道は酸素の原子軌道よりも少し上に書きます.

 

結合次数は2.5になります.つまり,NOの結合は二重結合でなければ三重結合でもないということです.

 

問4

標準反応エントロピー変化は,反応式の係数に気をつけて生成物の標準エントロピーから反応物の標準エントロピーを引きます.

 

問5

標準反応エンタルピーと温度が与えられているので,問4で求めた標準反応エントロピーを使って,\Delta G = \Delta H - T \Delta Sで標準反応ギブズエネルギーを計算します.

 

問6

ギブズエネルギー変化から平衡定数を求めるには,\Delta G = -RT \ln{K}を使います.

 

 \Delta Gが正なら非自発的,負なら自発的なので,一酸化窒素の生成反応は非自発的です.

 

問7

 \Delta G^\circとKの関係というのは,\Delta G = -RT \ln{K}のことです.

この式をギブズ-ヘルムホルツの式に代入してやります.

 

この年の共通化学に出てきたクラウジウス-クラペイロンの式で似たテクニックを使いましたが,\frac{d}{dx}(\frac{1}{x})=-\frac{1}{x^2}を変形した\frac{dx}{x^2}=-d(\frac{1}{x})を使うとファントホッフの式が得られます.

 

問8

ファントホッフの式を積分して平衡定数の温度依存性を表す式を導出します.

 

あとは数値を代入するだけでOKです!

 

問9

問8の結果から,温度を上げると平衡定数が大きくなっていくことが分かります.

 

平衡定数は反応物に対する生成物の比なので,平衡定数が大きくなるということは生成物が多くなることに対応します.

 

したがって,一酸化窒素の生成を抑制するには反応温度を下げることが必要になります.

 

ファントホッフの式から考察することも可能です.

 

この反応の標準反応エンタルピーは正なので,\frac{1}{T}に対して\ln{K}をプロットすると傾きが負の直線が得られることが分かります.

 

温度を上げると\frac{1}{T}は小さくなるので,この時\ln{K}は大きくなります.すなわち,Kは大きくなります.

 

問題Ⅱ

問1

与えられた名称の化合物を書く問題です.A,Bは問題ないと思いますが,Cはメソ化合物であることに注意です.

 

メソ化合物とは,不斉炭素を持っておきながら鏡像異性を生じない化合物のことです.

 

不斉炭素を持っていながら鏡像異性を生じないというのは,分子に対称面がある時に起こります.

 

2,4-ジクロロペンタンの場合,3位の炭素を通るように鏡を置くと元の構造と同じものが得られることから対称面が確認できます.

 

問2

芳香族に対する塩素,メトキシ基,ニトロ基,メチル基の効果について問われています.ニトロ基以外は電子供与基になります.

 

芳香族求電子置換反応とは,電子が不足している(電子を求めている)試薬が芳香族と起こす反応です.

 

試薬は電子を求めているので,芳香族側は電子をたくさん持っているほど反応を起こしやすくなります

 

また,オルト-パラ配向性は電子供与基が生じさせる性質です.ニトロ基などの電子求引基はメタ配向性を生じさせます.

 

酸の強さについてですが,酸に対する共役塩基の安定性を考察することで酸の強さを見積もることが可能です.

 

共役塩基が安定なほど,その酸は強いと言えます.

 

芳香族系の酸の場合,置換基上の負電荷を芳香環に分散させることで安定化できます.そのためには電子求引基を芳香環に導入し芳香環の電子密度を下げます.

 

したがって,安息香酸に導入することで酸性度を高くすることができるのはニトロ基しかありません.

 

問3(a)

第1級ハロゲン化アルキルとアルコキシドの反応はほぼE2反応ですが,Sn2反応が全く起きないわけではありません

 

まず,E2反応とは中間体を経由せず水素の引き抜き,ハロゲンの脱離と二重結合の生成が同時に起こる反応です.

 

Sn2反応とは中間体を経由せずハロゲンと求核試薬の置換が同時に起こる反応です.

 

立体的なかさ高さの影響を受けやすいのはSn2反応です.求核試薬が置換反応を起こすにはハロゲンの結合した炭素に近づかなければならないからです.

 

逆に,E2反応では求核試薬は水素を引き抜くだけなので立体的な邪魔を受けにくいです.

 

次に使用するアルコキシドに注目してみると,tert-ブトキシドとナトリウムエトキシドとではtert-ブトキシドの方が圧倒的にかさ高いアルコキシドであることが分かります.

 

したがってtert-ブトキシドを使うとSn2反応が起こりにくくなりE2反応がより優勢になります.

 

問3(b)

ワーグナー・メーヤワイン転移と呼ばれる反応が起こります.

 

より安定な第3級カルボカチオンになるべくメチル基のたくさんある方からメチル基が移動してくるというわけです.

 

第4級の炭素の隣の炭素にヒドロキシ基など脱離基があるような化合物はワーグナー・メーヤワイン転移が起きやすいです.

 

問4

クロム酸を使うとアルコールは一気にカルボン酸まで酸化されますが,クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)はアルデヒドで酸化を止めることができます

 

有名な試薬です.

 

問5(a)

与えられた分子式と実験条件から構造を推定する問題です.この手の問題では何よりもまず不飽和度を計算します.

 

不飽和度とは二重結合または環の数を表すもので,炭素と水素の数から計算できます.

 

素数をnとしたとき,水素が2n+2個なら不飽和度0(飽和),2nなら不飽和度1,2n-2なら不飽和度2になります.アルカン,アルケン,アルキンの関係と同じ感じです.

 

この問の場合,C3H6Oなので不飽和度1で二重結合または環が1個あります.

 

したがって,ケトン・アルデヒド・不飽和アルコール・環状アルコール,オキシラン構造を持つ化合物のいずれかになります.

 

どの実験条件から考えても良いです.ドライブの解答は一例です.

 

一番最初の条件は水素結合を持つ化合物を意味しています.つまり,アルコールです.

 

二番目の条件は構造から水素化した後の生成物を推定します.

 

三番目はアルドール反応のことで,アルデヒドかケトンであることを意味します.

 

四番目は不斉炭素を持つ構造を選ぶだけです.(R)体なので気をつけてください.

 

問5(b)

鏡像異性体の混合物の旋光度を求める問題です.このような問題に出くわしたら,まずはエナンチオマー(enantiomer)過剰率(e.e.)を求めることを優先します.

 

R,S体の量をR,Sで表すとエナンチオマー過剰率(R体が多い場合)は

           \frac{R-S}{R+S}×100

で計算できます.

 

もう一つ重要なことは,光学的に純粋な化合物の旋光度にエナンチオマー過剰率をかけると,その鏡像異性体の混合物の旋光度が分かります

 

例えば純粋な時に+100°の旋光度を示す化合物が,その鏡像異性体と混合されているとします.もしもエナンチオマー過剰率が50%e.e.なら,混合物の旋光度は50°になります.

 

問題に戻りますと,化合物Iとその鏡像異性体が重量比4:1で混合されているので,エナンチオマー過剰率は

           \frac{4-1}{4+1}×100 = 60%e.e.

です.これを化合物Iの旋光度,+10°にかけてやると,求める旋光度は6.0°になります.

 

問5(c)

グリニャール試薬のMgが結合した炭素は,Mgから強く電子を供与されて少し負電荷を帯びています(δ-).このため,グリニャール試薬は強い求核試薬です.

 

一方,カルボニル炭素は酸素に強く電子を引っ張られているので少し正電荷を帯びています(δ+).

 

求核試薬であるグリニャール試薬と,求電子試薬であるカルボニル化合物は反応してアルコールを与えます.

 

また,オキシランの炭素も酸素に電子を引っ張られているので求電子性を持ちます.

オキシランは炭素数を2個増やしたアルコールを合成するのに便利な試薬です.

 

問5(d)

化合物Gと化合物Iの生成物が少しやっかいです.

 

化合物Gの反応生成物はラセミ体になります.これはアルデヒドの立体的な特徴を抑えておく必要があります.

 

アルデヒド基の炭素はsp2混成しています.sp2混成軌道は平面三角形状に伸びているので,これと結合する酸素,水素,α炭素は全て同一平面内にあります.

 

平面状構造のものに試薬が付加することによって生じる化合物が不斉炭素を持つならば,生成物はラセミ体になります.

 

化合物Iとグリニャール試薬との反応はいわゆるSn2反応です.

 

Sn2反応は立体障害に敏感なので,メチル基に置換されていない炭素にグリニャール試薬が付加します.

 

まとめ

今回は化学・バイオ工学科の問題の解説をしてみました.次回からは平成31年度の問題の解説をしていきたいと思います!

最後まで見ていただきありがとうございました!!

令和2年度東北大学工学部編入学試験化学 解答

いつも見てくれてありがとうございます!高専生ちゃかのぶです.

 

今回は令和2年度東北大学工学部編入学試験の化学(共通)の解説をしたいと思います!

 

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

大問Ⅰ

以下,系に入る熱を正の熱とします.

問1(ア)

クラウジウス-クラペイロンの式に関する問題です.クラウジウス-クラペイロンの式は,蒸気圧と温度の関係を表す式です.

 

モル蒸発エントロピーをモル蒸発エンタルピーで表せ,という問題です.モル蒸発エンタルピーは,蒸発の際に系に入る熱に等しいので,エントロピーの定義式S=\frac{q}{T}qにモル蒸発エンタルピーを代入すればOKです.

 

問1(イ)

化学では最もよく出てくる式といっても良い式ですね...pV=nRTです!

 

ただし,V_{m,g}はモル体積,すなわち1 mol当たりの体積なので,物質量nは1とします.

 

ちなみに,水の場合は水蒸気とどのくらい体積が違うかというと,水 1 molは18 mL,水蒸気1 molは22.4×10^3 mLなので,\frac{22.4×10^3}{18}=1244になります.

 

問1(ウ)(エ)

個人的には\frac{dp}{p}=d\log_e{p}は少し気持ち悪いです(笑).

 

この式は\frac{d}{dx}\log_e{x}=\frac{1}{x}を変形したものなのですが,微分記号を分数のごとく扱っているのがどうも気持ち悪いんですよね...

 

問2(a)

クラウジウス-クラペイロンの式を積分します.

 

Tでの積分は自然にできると思うのですが,d\log_e{p}での積分はちょっと違和感を感じると思います.

 

ですが,\log_e{p}はこれで一つの文字と考えましょう\int d\log_e{p}不定積分\log_e{p}ということです.積分区間\log_e{p_i}から\log_e{p_f}とします.

 

積分したら,対数の差に関する性質を使って式を整理します.

 

問2(b)

クラウジウス-クラペイロンの式を使うのかと思いきや,\Delta_{vap}S=\frac{\Delta_{vap}H}{T}を使います.

 

モル蒸発エンタルピーの値と,蒸発させる水の量が示されているので,蒸発するときに系に入ってくる熱量を求め,絶対温度で割ってあげれば系のエントロピー変化が分かります.

 

問3

クラペイロンの式から考察します.

 

前述したとおり,液体から気体に変化するときは体積変化が非常に大きいです.このときエントロピー変化の値も大きいのですが,体積変化の値に比べるとそこまででもないです.

 

このため,液体→気体のときの\frac{dp}{dT}は小さくなってしまいます.

 

それに比べると,固体→液体の場合は体積変化はそんなに大きくないので,相対的に液体→気体の場合よりも\frac{dp}{dT}が大きくなります.

 

大問Ⅱ

問1(ア)(イ)

残念ながら,これらは暗記です...地殻中の元素の割合は,僕は ”おっしゃるてか(O Si Al Fe Ca)” で覚えました.

 

銑鉄や鋼は炭素含有量とセットで覚えておくと良いです.僕は,昔”鋼の錬金術師”が好きで単行本を買っていたのですが,裏表紙にこの話が載っていたのを今だに覚えています(笑)

 

問1(ウ)

こちらも体心立方格子が分かっていないと厳しいです.体心立方格子は立方体の中心に原子1個,角に原子\frac{1}{8}個入った単位格子です.

 

\frac{1}{8}個というのは,立方体の角は8つの立方体に共有されていることから分かります.

 

問1(エ)

単位格子の質量をどう求めるかがカギです.そのためには,鉄原子1個の質量を求める必要があります.

 

モル質量は,その原子1 mol(6.0×10^{23}個)分を意味するので,逆に言えばモル質量を6.0×10^{23}で割れば原子1個分の質量がでてきます.

 

単位格子の質量が分かったら,単位格子の体積で割ります.

 

問1(オ)

体心立方格子の場合,立方体の角にある原子は立方体の中心にある原子としか接していないことに注意してください.

 

頭の中で考えるのは無理があるので,必ず解答のような図を描いてください.

 

問題で平方根の値が与えられているのはここで使うためです.

 

問1(カ)

こちらも暗記です...

 

ステンレスはとても身近な合金です.水まわりの金属は大体ステンレスだと思います.

 

クロムと聞くと毒性の強そうなイメージがありますが,悪さをするのは+6に酸化されたクロムイオンで,金属クロム自体に毒性はありません.むしろ役に立っています.

 

問2

解答にも書いたとおり,酸化鉄は還元されるので,酸化剤です.酸化剤と反応するのは必ず還元剤ですから,一酸化炭素は還元剤です.還元剤は必ず酸化されるので,生成物は二酸化炭素になります.

 

反応物と生成物が分かれば,あとは係数合わせです.それぞれの物質の係数をabcdなどとおき,反応式の左辺と右辺で原子数が一致するように係数を決定します.

 

ほとんどの場合,未知数の数に対して方程式の数が足りないので,いずれかの文字に適当な数値を代入して他の係数を決定します.

 

この時代入する数値ですが,なんでも良いです.答えは同じになります.

 

ただ,計算のしやすさからなるべく分数がでないように係数を決めると早く,簡単に答えが求まります!

 

問3(a)

高校化学ではイオン化系列というものが出てきて,暗記して問題の条件に当てはめると思うのですが,イオン化系列とは一体何をもとに決めているのでしょうか?

 

それは標準電極電位です.2H^+ + 2e^- → H_2という反応を起こす電極(標準水素電極)の電位を0とした時の,他の電極の電位のことです.

 

標準水素電極に対して,Fe^{2+}が存在する溶液に浸したFe電極を接続したときの電位差がFe^{2+}+2 e^- →Feの標準電極電位というわけです.

 

標準電極電位の表に載っている半反応式は必ず還元反応ですが,次のことが言えます.

 

  • 標準電極電位が正 → その還元反応が進行しやすい
  • 標準電極電位が負 → その還元反応の逆反応が進行しやすい

 

この関係は,\Delta_rG = -nFEという関係式から分かることで,Eが正なら反応ギブズエネルギー変化が負,つまりその反応は熱力学的に進行しやすいと言えます.

 

Fe^{2+}+2 e^- →Feの標準電極電位は-0.44 V,つまり逆反応が進行しやすいです.これは鉄は水素よりもイオンになりやすいということを意味します.

 

したがって鉄を酸に浸すと,鉄は水素イオンを追い出して鉄イオンになり,水素イオンは仕方なく水素として出ていく,というわけです.

 

高校化学のイオン化傾向とは,標準電極電位が低い方を左に,高い方を右に並べたものなんです!

 

問3(b)

(a)の半反応式を組み合わせて全反応式を作り,係数から考察します.

 

この場合,水素1 mol が発生するためには鉄1 mol が必要です.

 

問3(c)

ここでも標準電極電位の表が役に立ちます!ネットで検索してみてください.

 

Zn^{2+}+2 e^- →Znは -0.76 V,Sn^{2+}+2 e^- →Snは -0.14 Vです.

 

Fe^{2+}+2 e^- →Feは -0.44 Vだったので,亜鉛は鉄よりもイオンになりやすく,スズは鉄よりもイオンになりにくいことが分かります.

 

鉄よりもイオンになりにくいスズでめっきしたブリキは,鉄が最初に酸化されやすいので,トタンよりも錆びやすいです.

 

大問Ⅲ

問1

ベンゼンスルホン酸は無機酸ほどではありませんが,有機酸の中では非常に強い方です.

 

フェノールは有機酸の中ではかなり弱い方です.なので溶かしたいときはNaOHなどの強い塩基を入れてあげます.

 

酸性度の順番は大体頭の中に入れておくと役に立ちます.

 

トルエンはよく溶媒として使われます.過マンガン酸カリウムなど,非常に強い酸化剤と反応させることで安息香酸に変えることができます.なんでCH3からCOOHになるのかは僕もよく分かりません(笑)

 

酸性度に関する余談ですが,実はケトンやアルカンといった一見酸にならなそうな化合物についても酸性度を考えることができます.興味のある方は”pKa 炭化水素”で調べてみてください!

問2

オルト-パラ配向性,メタ配向性が分かっているかが問われています.これに関しては分かりやすいサイトがたくさんあるので,そちらを見てみてください!

 

構造異性体の数を聞かれた時は,一見違いそうでも同じ構造に注意してください.

 

裏返したり,回転させてみて完全に構造が一致したら同一物です.

 

問3(a)(b)

こちらは暗記になります.スズと濃塩酸を組み合わせた還元剤は,ニトロ基の還元によく使われます.

 

問3(c)

水と有機層の分離で,有機層はどちらかと聞かれた時は,クロロメタンや四塩化炭素などのハロアルカンを除き上に有機層が来ます!

ハロアルカンだけは特別で,他は上にくると覚えちゃってOKです.

 

問3(d)

混成軌道に関しても,分かりやすいサイトがたくさんあるのでそちらをどうぞ!(笑)

 

問3(e)

共鳴は大学化学の範囲なので中々難しいと思います...

 

共鳴構造は,分子の構造をより正確に示すための方法です.⇔を使って表されますが,共鳴構造はそれぞれ行ったり来たりしているわけではなく,全て重なり合った状態で分子は存在しています.

 

共鳴構造を書くときには,電子対の移動を一緒に書きます.

 

アニリンの場合,窒素が非共有電子対を持っているので,この非共有電子対がベンゼン環状を動くようになります.

 

解答に書いた共鳴構造は,窒素上の非共有電子対がベンゼン環のπ共役系(6つのp軌道の重なり)に流れ出ている様子を表しています

 

炭素上に電子対が乗っかっている構造はよく書きます.

 

また,あくまでもオクテット測(原子の最外殻の電子数は8個まで)を満たしていることが前提です.炭素上に電子が6個しかない構造はダメです.

 

先ほど分子は共鳴構造が重なり合った状態で存在していると書きましたが,それぞれの共鳴構造がどのくらい分子の構造に寄与しているかは様々です.

 

例えば解答の共鳴構造の左から二つは,ベンゼン環という安定な構造を有しているので,他の3つよりも大きく分子の構造に寄与しています

 

電子が非局在化(一か所に留まっていない,広がっている)している構造は安定で,分子の構造に大きく寄与しています.

 

問3(f)

前述したとおり,アニリンの窒素上の非共有電子対はベンゼン環上に流れています.

 

水素イオンを受け取るには電子対が必要ですが,電子対はいつでも窒素上にいるわけじゃないので,水素イオンを受け取りにくくなってしまいます

 

一方,脂肪族アミンの窒素上の非共有電子対は共鳴の効果が0なので,いつでも窒素上にいます.つまり,水素イオンを受け取りやすいです.

 

このため,脂肪族アミンはアニリンよりも塩基性が強くなります.

 

問3(g)

無水酢酸はアセチル化によく使われる試薬です.

 

アセトアニリドとベンズアミドをごっちゃにしないよう注意です!

まとめ

大学化学が一部出ているので,専門外の方には難しいかもしれません...

 

今回は頑張って解説したつもりですが,どうしても理解できないところがあるかと思います.

 

そのときは,TwitterのDMで直接僕に質問してくれても構いません!

 

最後まで見てくれてありがとうございました!頑張ってください!

令和2年度東北大学工学部編入学試験物理 解答

こんにちは! 高専生ちゃかのぶです.

 

ブログ更新が滞ってしまいましたが,物理の解答の解説をしていきたいと思います!

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

問題Ⅰ

問1(a)

剛体定滑車の時刻tにおける角速度ωを求める問題です.親切にも慣性モーメントがIと定義されているので,回転の運動方程式を立てて積分するだけでOKです!

 

回転の運動方程式の右辺に書く力のモーメントは,角速度ωの方向に回転を生じさせるような場合を正とします.

 

問1(b)

問題Ⅰの最初に書いてある前置きの中の,”糸と定滑車の間は滑らないものとする”がポイントです.

 

滑らないので,糸の他端の変位yは定滑車の回転した距離Rθ(回転角をθとしたときの弧の長さ)に等しくなります.

 

y=Rθの両辺を時間t微分すると\frac{dy}{dt}=\frac{dθ}{dt}になりますが,\frac{dθ}{dt}は問1(a)で求めた角速度ωに等しいです.

 

このようにして糸の他端yを時間tで表します.

 

さらに,yに長さLを代入し,糸が定滑車から離れるときの時刻を求めます.

 

あとは時刻tにおける糸の他端の速度\frac{dy}{dt}にこの時の時刻を代入すれば解が得られます.

 

問2(a)

今度は糸の一端に質量mのおもりが付いています.おもりは当然下降するはずなので,定滑車の回転は反時計回りを正,おもりの変位は鉛直下向きを正にすると解きやすいです.

 

もちろん,定滑車の回転は時計回りを正,おもりの変位は鉛直上向きを正にしても結局答えは同じになります.

 

回転の向きや変位の向きは自分の好きなように正の方向を決めて良いわけですが,あまり変な決め方をすると符号を間違えたりするので,基本的には物体が運動するであろう方向を正にすると僕は決めています.

 

糸は滑らないので,やはりy=Rθが成り立ちます.

 

Tを\frac{d^2y}{dt^2}で表すか,\frac{d^2y}{dt^2}をTで表すかは自由なので解答にあるような過程は必ずしも従う必要はありません!

 

また,\frac{d^2y}{dt^2}=\frac{mR^2}{mR^2+I}gや,T=\frac{I}{mR^2+I}mgといった,単位を意識した表記をするのがおすすめです!

 

gmgの前の分数は,分子と分母で単位が等しい(慣性モーメント)ため,無次元(単位が無い)になっています.

 

このため,左辺と右辺で単位が等しいことが一目で分かり,計算ミスなどに気づけます.

 

問2(b)

求めるものは,おもりが距離lだけ落下したときの時刻時刻tにおけるおもりの速度vです.

 

問1(a)で求めたおもりの加速度\frac{d^2y}{dt^2}=\frac{mR^2}{mR^2+I}gがあるので,この式をt積分時刻tにおけるおもりの速度v時刻tにおけるおもりの変位yを求めます.

 

これをt=の形に整理して,y=lを代入しおもりが距離lだけ落下したときの時刻を得ます.

 

この時刻を,時刻tにおけるおもりの速度$v$に代入して問2は終了です.

 

ここでも単位を意識した表記をしています!glの単位はm^2/s^2なので,平方根がついてちょうど速度の単位m/sになります.

 

問題Ⅱ

問1

問題Ⅱはガウスの法則\oint_S \mathbf{E} \cdot d\mathbf{S}=\frac{Q}{\epsilon_0}のオンパレードです.

 

点Oを中心とする半径rの球面を考えるのですが,0 \leqq r \lt ar \geqq aで球面内に存在する電荷が異なるので場合分けをしています.

 

0 \leqq r \lt a

体積電荷密度\rho_0が与えられているので,0 \leqq r \lt aでは\rho_0に半径rの球面の体積をかけて,球面内に存在する電荷とします.

 

また,電場は球対称に出ているので電場\mathbf{E}と面素ベクトルd\mathbf{S}は並行です.したがって

 

\oint_S \mathbf{E} \cdot d\mathbf{S}=\oint_S EdS=E\oint_S dS

 

となります.\oint_S dSは半径rの球面の面積を表すので,4 \pi r^2になります.

 

r \geqq a

考え方は上述した考え方と同じです.違うのはガウスの法則の右辺のQに代入する式です.

 

問題で与えられている球に存在する全ての電荷に等しい式を代入します.

 

なぜか電荷面密度σが与えられているので,これを足し忘れないようにしましょう!

 

図示は導いた式の形から考察します.0 \leqq r \lt aの時の電場の式は,Erに比例しているのでグラフは直線状になります.

 

一方r \geqq aのときはE\frac{1}{r^2}に比例しているので,0に漸近する曲線になります.

 

問2

電位を求めるためには電場を積分する必要があるので,まず電場を求めます.

 

0 \leqq r \lt aや,b \leqq r \lt cのときは,導体内部なので電場は0になります.

 

外部電場と導体内部で移動する自由電子による電場が相殺するためです(静電誘導).

 

a \leqq r \lt bのときはガウスの法則をそのまま適用します.

 

r \geqq cのときは静電誘導,電荷保存が分かっていればすぐに終わります.

 

解答問2(D)の最初の部分は導体球殻Bの内面と外面の様子をイメージしてもらうために書いたものなので省略しても良いです.

 

次は電位です.

 

+1 Cの電荷が電場によってある点から無限遠まで移動された時に,電場が電荷に対してした仕事が電位に等しいので,中心からrの距離にある点から無限遠まで電場を積分すれば電位が求まります.

 

ただし,領域によって電場が変わるので,そこに注意して電位の式を立式します.

 

電場は変位に対する電位の変化率(\mathbf{E} =- \nabla U)なので,導体内部(E = 0)では電位は定数になるはずです.

 

問3(a)

静電エネルギー密度の式\frac{1}{2} \epsilon_0 E^2電磁気学演習に載っていたのを覚えました...

 

導出がネット上に出ていますが,なんだかよく分かりませんでした(笑)

 

この式にa \leqq r \lt bの時の電場の式を代入して終了です.

 

問3(b)

問3(a)で求めた静電エネルギー密度を利用します.

 

静電エネルギー密度は単位体積あたりの静電エネルギーを表すので,球殻AとBの間で微小体積を考えてa \leqq r \lt b積分すればOKです.

 

微小体積の考え方ですが,この場合2通り考えられます.

 

一つは解答にあるように,半径r,厚みdrの薄い球殻を微小体積とするという方法です.

 

この"薄い"の意味は,球殻の内半径と外半径の差が無視できるほど薄いという意味です.こう断っておく置くことで,この球殻の体積を簡単に表すことができます.

 

二つ目は,三次元極座標系を使って三重積分する方法です.三次元極座標系におけるヤコビアンr^2\sin\thetaですが,これにdr,dθ,dφをかけたr^2sin\theta drd\theta d\phiは,座標(r,θ,Φ)の位置にある微小領域の体積を表します.

 

つまり,r^2\sin\theta drd\theta d\phiに静電エネルギー密度の式をかけたものは,微小領域に蓄えられた静電エネルギーを表します.

 

あとは0 \leqq r \leqq a-\pi \leqq \theta \leqq \pi0 \leqq \phi \leqq 2\pi積分します.

 

ですが,三次元極座標による方法は三重積分を伴うために計算量が多くなりがちです.

 

僕は薄い球殻を使う方がおすすめです!

 

問3(c)

問3(b)で全静電エネルギーを求めたので,公式U=\frac{1}{2}CV^2=\frac{Q^2}{2C}を用いて静電容量を計算します.

 

誘電率\epsilon_0の単位はF/mなので,解はちゃんと静電容量の単位になっています.

 

大問Ⅲ

問1

光の屈折の定義ですが,文字数が25字以内とかなり少ないので解答のような当たり前のことを書いてしまいました(笑)

 

媒質内では光の速度が変わることについても触れるべきだとは思ったのですが...

 

屈折角 \theta_1は屈折の法則をそのまま用いるだけでOKです.

 

問2(a)

まず屈折角\theta_2に対する入射角を求める必要があります.

 

点Oと点Pを結ぶ直線を斜辺とする直角三角形が見えるので,点Pでの入射角はすぐに求めることができます.

 

そうすると\sin{\theta_2}=\frac{n_A}{n_B}\cos{ \theta_1}が得られますが,

\cos{\theta_1}\sin{\theta_1}を用いて表現できるので,問1で求めた式を使います.

 

問2(b)

点Qでの入射角は点Pでの屈折角に等しいので,屈折の法則を使えばすぐです!

 

問3

まずは点Pでの臨界角を求めます.

 

全反射は入射角が臨界角より大きいときに起きる現象なので,これを式で表すと

 

\frac{\pi}{2}-\theta_1\gt(点Pでの臨界角)

 

となります.この式の両辺のsinをとり,\sin{(\frac{\pi}{2}-\theta)}=\cos{\theta}を用いて変形していくと最終的に

 

n_A^2-n_B^2\gt\sin^2{\theta_0}

 

を得ます.

 

最後は"入射角\theta_0に依らない "を式に表します

 

上述した式の右辺には\sin^2{\theta_0}がありますが,\sin{\theta}は必ず0から1の間の数値しかとりません

 

これを踏まえると,左辺が常に1より大きければ上式はいつでも成立します

 

なので求める条件はn_A^2-n_B^2\gt1になります.

 

三角関数が0から1までの値しかとらないというのは,結構よく使います!

 

問4

まず屈折角\theta_nですが,点Rにおける入射角を求める必要があります.

 

一見,媒質AとBの境界での全反射を全て追うことが必要そうですが,反射の法則により点Pの後の全反射での反射角は全て点Pでの入射角に等しいです.

 

点Pでの入射角は\frac{\pi}{2}-\theta_1なので,点Rでの入射角は\theta_1になります.

 

計算していくと,結局\theta_n$は$\theta_0に等しくなります.

 

次は光が通過する経路の長さln_A,L,\theta_0で表せとのことです.

 

問題の図にあるような,光の道筋の長さを直接計算するのはかなり厳しいと思います.

 

そこで,点Oから点Rに達するまでの時間を利用します.

 

つまり,媒質A内での光の速さvで距離l進む時間と,媒質Aの軸に平衡な光の速度成分v\cos{\theta_1}で距離L進む時間が等しいです.

 

これは中々イメージが難しいと思います...良い例えが思い浮かびません.

 

これを式に表すと,\frac{l}{v}=\frac{L}{v\cos{\theta_1}}になります.

 

ここでも\cos{\theta_1}が出ているので,\cos{\theta_1}=\sqrt{1-\sin^2{\theta_1}}を用いると最終的に

 

l=\frac{n_A}{\sqrt{n_A^2-\sin^2{\theta_0}}}L

 

が得られます.

 

 

 

問5

問5はどうしても分かりませんでした...ごめんなさい!

"点Pで全反射せず,点Qで全反射する"という式を目標にやってみたのですが,得られた2式を無理やり組み合わせてもうまくいきませんでした...

 

まとめ

更新が滞っていましたが,なんとか書ききることができました!

 

次回は一般化学の解説をしたいと思います!

 

最後まで見てくださりありがとうございました!

 

令和2年度東北大学工学部編入学試験数学 解答

こんにちは!高専生ちゃかのぶです.

 

今回からいよいよ東北大学工学部編入学試験過去問の解答を公開していきたいと思います!

 

最初に作った解答は赤ペンの修正などで見づらいので,一旦整理してから公開することにしました.

 

なので解答の公開が少し遅くなると思います...ごめんなさい(´;ω;`)

 

Google driveへのリンクを貼り付けておくのでこちらからどうぞ!

drive.google.com

 

 

また,問題そのものは著作権上公開しません.学生課から東北大に請求することができるので,高専の学生課に問い合わせてみてください.

 

一番新しい過去問の解答から順次公開していく予定です.

 

今回は令和2年度編入学試験の数学です!

 

 

問題Ⅰ

問1

内分点のベクトル表示さえできれば大丈夫です!点Dと点Eの位置ベクトルを \vec{a},\vec{b},\vec{c}で表すときにミスしなければOK.

 

やりがちなミスとしては

\vec{OD} =\frac{1}{2} \vec{BC} = \frac{\vec{c} - \vec{b}}{2}

でしょうか.これは間違いです.図を書いてみると分かると思います.

 

問2

問1で\vec{AD}と\vec{AE}を求めた理由が分かります!ここで使います.

 

解答の図を見てもらうと分かると思うのですが,\angleDAE = 30^\circ\vec{AD}\vec{AE}のなす角を意味しています.

 

\vec{AD}\vec{AE}をkで表し,内積の公式を使ってkに関する等式を作ります.

 

30^\circのように意味ありげな角度が出題されたら三角関数に入れるんだなと思っても良いと思います(笑).

 

問3(a)

未知数が二つ(sとt)あるので,方程式を二式つくる必要があります.

 

大体で良いので,点A,B,Cを通る平面と垂線 l_1 を書きます.

 

点Hは点A,B,Cを通る平面と垂線 l_1 の交点なので,\vec{OH} は点A,B,Cを通る平面と垂直である必要があります.

 

このことから,\vec{AB}\vec{BC}\vec{CA}はどれも\vec{OH}と垂直です

 

方程式が二式必要なので,\vec{AB}\vec{BC}\vec{CA}の中から二つ選んで\vec{OH}との内積をとればs,tを決定できます.

 

問3(b)

点Aも点Dもl_1と垂直な平面上にあるので,l_2l_1と垂直です.

 

従って,この問題は点Hとl_2の間の距離を求めろ,という問題に帰結します.

 

あとは l_2 の方程式を求めて,直線と点の距離を求める公式に値を入れるだけでOKです. 

 

問題Ⅱ

問1

I_1 = \int^{\pi/4}_0\frac{dx}{\cos{x}} です.初見ではかなり考えるかもしれませんが,安心してください,編入数学徹底研究に不定積分が載っています(笑)

 

分母と分子に\cos{x}をかけるという,約分の逆の操作をしなくてはいけないので,慣れていないと難しく感じるかもしれません.

 

この操作はよく使うので,慣れておくと積分が楽になると思います!

わざわざこんな操作をする理由は,\cos^2{x} = 1 - \sin^2{x}を使って置換積分を行うためです.

 

分子に\cos{x} dxという形がありますが,\cos{x} dxsin{x} = tという置換をする上でとても嬉しい形です

 

 置換した後は,部分分数分解をします.こうすることで簡単な不定積分になります.

 

問2

I_2 = \int^{\pi/4}_0\frac{dx}{\cos^3{x}} です.正直なところ自力で解けるようになりたいところですが,ヒントが与えられています.

 

\frac{1}{\cos{x}}\frac{d}{dx}\tan{x} = \frac{1}{\cos^3{x}} は,部分積分を用いよということです.

 

ありがたく使わせていただきましょう!(笑)

 

部分積分のあと,\tan{x} = \frac{\sin{x}}{\cos{x}}を使うと,\int^{\pi/4}_0\frac{\sin^2{x}}{\cos^3{x}}という形が出てきます.

 

ここでも\sin^2{x} = 1 - \cos^2{x}を使います.

 

そして整理すると,右辺にI_1I_2と同じ形の積分が出てきます!

最終的にI_2 = \sqrt{2} - I_2 + I_1という等式を得ます.

 

これをI_2について解き,I_1を代入するとやっと答えです...

 

問3

分母の\cos{x}の指数がnになると途端に計算が複雑になりますが,実は計算の方針は問2とほとんど同じです.

 

\int^{\pi/4}_0\frac{dx}{\cos^{2n-1{x}}}の分子分母に\cos{x}をかけて分子に\cos{x}を出現させます.

 

問2と違う点はここで\frac{d}{dx}\sin{x} = \cos{x}の部分積分を使うという点です.

 

分母の\cos^{2n}{x}を無理やり\cos^{2n}{x} = (\cos^2{x})^n = (1 - \sin^2{x})^nとして置換積分しようとすると,部分分数分解ができません.

 

cos^{-2n}{x}微分に注意して部分積分を行い,問2同様に\sin^2{x} = 1 - \cos^2{x}を使います.

 

そうすると右辺にI_nI_{n+1}が現れるので,整理すると目的の漸化式が得られます!

 

問4

令和2年度の数学の中では一番難しかったです.

 

\frac{nI_n}{2^n}という意味ありげな形のn \to \inftyを求めよとのことなので,\frac{nI_n}{2^n}という形を上手く出現させるのが方針になります.

 

解答の赤線部分は,無理やりnn+1を出現させるため整理の逆や約分の逆をしている部分です.

 

特にn = n + 1 - 1という操作は慣れてないと気持ち悪いと思います...

 

次の” lim_{n \to \infty}\frac{nI_n}{2^n}は収束するので” は,問題文から極限が存在することが想定されるので書きました(笑)

 

\frac{4}{n+1}\frac{(n+1)I_{n+1}}{2^{n+1}}\frac{1}{n}\frac{nI_n}{2^n}n \to \infty で収束するという部分は,極限の性質 \lim_{x \to \alpha}{(f(x)g(x))} = \lim_{x \to \alpha}{f(x)}\lim_{x \to \alpha}{g(x)} を用いています.

 

その後は地道にlim_{n \to \infty}\frac{nI_n}{2^n}\alphaとおき,\alphaについて解きます.

 

解答ではlim_{n \to \infty}\frac{(n+1)I_{n+1}}{2^{n+1}}\alphaとおいてることにちょっと引っかかる方もいると思いますが,

 

例えばn+1 = uとおくと,n \to \inftyのときu \to \inftyなので,結局lim_{n \to \infty}\frac{(n+1)I_{n+1}}{2^{n+1}}lim_{n \to \infty}\frac{nI_n}{2^n}と等しくなります.

 

問題Ⅲ

問1

計算問題です.計算過程は省略します.

 

逆行列の求め方は数種類ありますが,行列の形に応じて求め方を変えると時間短縮につながります!

 

この問のように大きい数(3や4)が成分に多い行列は余因子行列を利用した方法がおすすめです.3×3行列の場合,余因子は2×2行列式になるので計算ミスを減らせます.

 

1や2など,小さい数が成分に多い行列は掃き出し法がおすすめです.これは行基本変形が簡単にできるからです.

 

僕はwxmaximaというフリーソフトを使って解答を確認していました.行列の逆行列固有値固有ベクトル微分方程式の解などを計算してくれる優れものです.

 

問2(a)

こちらも計算問題なので計算過程は省略します.固有ベクトルの大きさを1にするのを忘れないでください!

 

問2(b)

\bf{u}はよく見ると(a)で求めた固有値λ = 2に対する固有ベクトルの-5倍であることが分かります.

 

これはつまり,\bf{u}\lambda = 2に対する固有ベクトルであることを意味します.

 

固有値固有ベクトルの定義に戻ると,\bf{u}に行列Bをかけたものは\bf{u}の2倍に等しいので,さらに行列Bをかけていけば,B^n\bf{u}を求めることができます.

 

問3(a)

計算過程は省略します.固有値固有ベクトルを求めた後,正則行列Pを作ります.

 

このとき,|P| \neq 0であることを示して正則であることを明記してください.

 

時間があれば,P^{-1}CPも計算しておきましょう.

 

問3(b)

こちらも計算問題です.P^{-1}CP = (対角行列)の両辺をn乗してC^nを計算します.教科書に載っている方法で大丈夫です!

 

まとめ

手始めに令和2年度東北大学工学部編入学試験数学の解説をしてみました~

 

texを使った数式の表示は初めてやったので大変でした(笑)

 

次回は物理の解説をしたいと思います!

 

最後まで見ていただきありがとうございました!

使用した単語帳,問題集の紹介(TOEIC)

皆さんこんにちは!高専生ちゃかのぶです.

 

このブログを開いて1か月が過ぎました.

 

ブログを書く上で自分の受験生活を振り返るのですが,ちょうど1年前(2020年1月)新型コロナウイルスが国内で初確認されたのを覚えています.あの頃はコロナが受験を大きく変えるとは想像もしていませんでした.

 

2021年に大学編入試験を受験される方は凄い不安を感じているかと思います...

 

でも,不安を感じている中でも手を動かし続けられるかどうかが合否を決めると思います.

 

混乱の中でも勉強に向かった経験は決して無駄にならず,自分の誇りになります!!

どうか手を止めずに頑張ってください.応援しています.

 

 

さて,今回はTOEICの勉強に使用した単語帳,問題集の紹介です!

前回はこちら↓

tyakanobu.hatenablog.com

 

 

TOEIC

TOEICテスト出る語句1800+(早川幸治 著,コスモピア)
TOEICテスト出る語句1800+[MP3音声付]

TOEICテスト出る語句1800+[MP3音声付]

  • 作者:早川 幸治
  • 発売日: 2015/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

単語帳として一番おすすめするのがこの本です!

 

この単語帳はTOEICに頻出の英単語をショートストーリーに混ぜ込んでいます.

単語帳にありがちな,英単語と短い文章だけ載っているのとは格段に楽しさが違いました.

 

ちゃんと英単語の英語音声,日本語音声も収録されています.さらにショートストーリーの音声もあるのでリピート練習もできます.

 

ショートストーリーなのでリスニングの練習ができる上に,英単語の文中での自然な使い方も理解できるという優れものです.

 

TOEICの単語帳として最も有名なのはTOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ(朝日新聞出版)ですね.

 

ですが,僕は英単語がびっしりと書いてある単語帳がどうも苦手で続きませんでした.

 

単語帳をどうしようか悩んでいたところ,図書館でたまたまこの本を見つけました.

 

TOEIC700点台を取るまでこの単語帳一冊を極めました.この本に載っている英単語は本当にテストでよく見かけます

 

普通の単語帳じゃ続かない!という方におすすめです.

 

TOEIC 公式問題集
公式TOEIC Listening & Reading 問題集 7

公式TOEIC Listening & Reading 問題集 7

  • 作者:ETS
  • 発売日: 2020/12/04
  • メディア: 大型本
 

TOEICを受験するなら模試用に一冊は必ず持っておくべきです.

 

他にもいくつかコスパの良さそうな問題集が販売されていますが,やはり公式問題集が一番信頼がおけるのではないでしょうか.

 

このシリーズは毎年新しいバージョンが発売されていますが,一番新しいverを購入するのが無難です.あんまり古すぎると問題の形式が違ったりするので.

 

一番最初の方にマークシートが付属しています.本番さながらの模試ができます.

マークシートはコピーして再利用できるようにしました.

 

先述したTOEICテスト出る語句1800+(早川幸治 著,コスモピア)に載っていない単語は紙に書きだして後で見直すようにしました.

 

1駅1題 新TOEIC TEST文法特急(花田徹也 著,朝日新聞出版)
1駅1題 新TOEIC TEST文法特急

1駅1題 新TOEIC TEST文法特急

  • 作者:花田 徹也
  • 発売日: 2009/10/07
  • メディア: 新書
 

TOEICのpart 5対策用に購入しました.

 

この本の良いところは1ページ1題,そして解説に丸1ページ割いているところです.解答に至るまでの思考の過程が詳しく掲載されています.

 

ページの右上の解答目標タイムが書かれているのもポイントです.

 

持ち運びやすいサイズなので,電車内や車内で少し解くのに最適でした.

 

TOEICを始めた頃から使っていたので,TOEICの勉強を始めたばかりの方におすすめです.

 

TOEIC L&R TEST パート3・4特急 実力養成ドリル(神崎正哉,Daniel Warriner 著,朝日新聞出版)

part 3,4対策用に購入しました.

 

part 3,4対策用の問題集は特にこだわりは無かったのですが,特急シリーズはサイズ感が好きなのでこの本にしました.

 

問題が豊富なのでとにかく数をこなせます.

 

ただ,時々明らかに他の問題よりも難しい問題があったりして少し苛立ったときもありました(笑)

 

ただ聞き流すだけでは慣れなかったので,最初から最後まで噛まずに言えるようになるまで音読しました.

 

TOEIC(R)TEST短期集中リスニング TARGET600 NEW EDITION(森田鉄也 著,Jリサーチ出版)
TOEIC(R)TEST短期集中リスニングTARGET600 NEW EDITION

TOEIC(R)TEST短期集中リスニングTARGET600 NEW EDITION

 

本屋で見つけたのですが,中身が見やすくサイズ感も良かったので購入してみました.

 

TOTAL600点を目標にしているリスニングの問題集ということで,TOEIC700点台を目指す途中の問題集として適しています.

 

結局は公式問題集や特急シリーズに落ち着きましたが,この問題集も買って良かったと思っています.

 

人によると思いますが,TOEICはリスニングの方が点数が伸びやすいと思います.

 

300点台や400点台の方は,最初はリスニングの方から手を付けてみてはいかがでしょうか.点数が上がったときは嬉しいです.

 

まとめ

今回はTOEICの勉強に使用した単語帳,問題集を紹介してみました.

 

TOEICの問題集を選ぶうえで気をつけたことは,

  • 持ち運びやすさ
  • デザインの見やすさ

の2点です.英語学習は継続が大事なので,どこでも気軽に問題集を取り出して勉強するために持ち運びやすさ(本の大きさ)を重視しました.

 

TOEIC公式問題集はかなり大きいので基本的に自宅での勉強に使いました.

 

中のデザインが見やすいかどうかも大事です.こればっかりは書店に行かないと分かりませんので,問題集は書店で実際に中を見てから購入するのがおすすめです.

 

図書館で試し読みしてみてネットで購入するのもありですね!

 

 

僕が使った問題集,参考書は一通り紹介しました.

次回からは過去問題の解答を掲載しようと考えています!

 

最後まで読んでくださりありがとうございました!